第2話

 カップラーメンには、こだわりがある。ごめん、僕にこだわりはない。

 会社帰りに外食をする気分になれず、かと言ってわざわざ手間を掛ける気もなく。そこで活躍するのがカップラーメン様の出番だ。


 日頃からの備えが大事なのだよ。そう言って我が家には常時10種類くらいのカップラーメンが備蓄されている。もとい、山と積まれている。

 ローリングなんとかで、賞味期限が切れないようにゆるゆると食べて、食べた分を買って補充するのだ。


 カップラーメンの山を眺めて不服そうな彼女に防災用だという綺麗な建前を一通り解説すると、ラーメンと名のつくものにこだわりのある彼女は、

「商品の選定が良くない」

 と呟いて彼女の分の備蓄の山を買い増ししに行くこととなった。いや、元から二人分は意識してましたよ?


 二つ目の山を積み上げて満足そうな彼女の顔を思い出しているうちにお湯が沸いた。


「こっちの山も食べていいけど、そもそも貴方のお金で貴方の備蓄だけど、私のお気に入りのラーメンって事をよくよく味わって、そして速やかに補充して」

 なんて言われていたのも思い出す。

 まぁ、彼女のラーメンを選ぶのだけれど。

 明日来る予定の彼女は気付くだろうか。目聡く気付くのだろうな。何せ彼女は、ラーメンにこだわりのある人だから。


 ぴろりん♪


 彼女からのメッセージ音。

 もうそろそろ3分だ。

 彼女なら言う。


「メッセージは逃げない。美味は、逃げる。OK? 食卓にスマホなど存在しないのよ!」


 しかし、頬がゆるむのを感じながら、カップラーメンの蓋を開けるよりも先にスマートフォンのロックを外す。


 僕は、ラーメンにはさほどこだわりのない男だ。

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ラーメン 風薙流音♪ @windcreator

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