第36話 現代の星天堂
五月のある日、市報に『株式会社星天堂』が株主を募集するという記事が出た。『株式会社星天堂』とは、市の物産を扱う第三セクターである。
幕末の星野川藩に、星天堂という店があった。藩の財政危機を救うため、家老の天野長久という人が始めた事業だ。藩の物産を扱う店を全国展開して大成功を収めた。士族の商法の稀な成功例だ。今でも星天堂という屋号を持つ店が見られるが、それはこの名残である。
さらに山あいの小藩であるにもかかわらず、星野川藩は事業で得た資金で洋式帆船『星海丸』を建造して、全国各地で交易をし、ついには蝦夷地開拓にまで乗り出していった。
平成の今、市民から株主を募り、星野川市との共同出資で、第三セクターとして星天堂を蘇らせようというのが、株式会社星天堂事業である。株主として意見を出し、星野川市の役に立てればと思う。一人二株十万円という規定の出資金を持って、僕は設立準備室のある市民会館へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます