第35話 捲土重来を期して

 僕の票は、新聞社も読めなかったようだ。

 人づてに聞いた話では、実際の得票数よりもはるかに少なく見積もっていた。地盤という基礎票から予想するのだから、地区の推薦のない候補の票は、まったく読めないものになる。

 僕が得た票は地区というしがらみのない、目先の利益にとらわれない純粋な票だと考えたい。そのような票にこそ、全身全霊で応える価値があると思う。次点で落選したのだから話にならないが、恩返しのためにも活動していくことを決意した。

 まずは選挙事務所を片づけて、輸入雑貨店を再開した。

 妹は六月に結婚式を挙げたあと、関西へ出ていくことになっている。これから店は仕入れから販売まで僕が行う。二階は机と書棚を置いて、事務所とした。

 すべての準備は整った。

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