第34話 すっごく悔しいねん
月曜の朝、玄関に誰かが訪ねてきた。
声の大きな人である。二階の自室まで響いてくる。
青年会議所の西條という人で、今回当選した四人の議員が所属する青年会議所に僕も入り、一緒に活動して、次の選挙を目指してほしいという話であった。対応に出た母が、息子は熱を出して寝ていると告げた。
一週間近く、風邪で寝込んだあと、応援してくれた中学の同級生に、力が足りなかったことを詫びて回った。これからも活動を続けていくために、いろいろと意見を聞かせてほしいと頼んだ。
涙を浮かべて悔しがる人もいれば、年寄りの議員が亡くなって早く繰り上げ当選になるように祈っているという人もいた。その気持ちに応えられるよう、これからも店の二階を事務所として活動していくことを伝え、気軽に寄ってくれるようにお願いした。
香山さんは、仕事からまだ戻っていなかった。お母さんから「娘も自分のことのように落胆しているんです」と聞かされ、胸が締めつけられた。
その夜、本人にも電話で謝った。
「ごめんね。せっかく応援してもらったのに、僕に力がなかったから…。迷惑かけたね」
「私ね、すっごく悔しいねん。これからも手伝えることがあったら何でも言って。協力するから」
少し鼻にかかった彼女の言葉は涙声に聞こえた。落選後も支えてくれる気持ちは、確かに心強い。しかし、自分の力不足がいっそう無念に思え、悔しさばかりが募った。
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