最終章
最終章 秘密
「産まれたって?」
「あ、うん。昌平くん、また泣いてた」
「またかぁ。まぁ良かったね。今度のお祝い何にしよっか」
パソコンの画面を覗き込む文人と陽。そこには、可愛らしい洋服やおむつなどのギフトが映し出されている。それを覗き込みながら、二人は同じように首を傾げた。三人目となると何を送れば良いのか、と。
あれから数年。緋菜は、第三子となる女の子を出産した。昌平の両手に巻き付いていた子達は、緋菜がベッドに戻るなり駆け寄る。ママ、と。
昌平と緋菜が結婚をしたのは、プロポーズから一年も経たないうちのこと。両家に挨拶を済ませ、結婚の準備を進める中で、妊娠が発覚したのである。それも、双子。生まれる前から昌平は緋菜を心配し、主に家事を賄って来た。母親になった緋菜は、色々な事に追われながら成長している。家事も大分出来るようになり、息子たちの好物は『ママの玉子焼き』だ。賑やかになった互いの家を行き来しながら、今も四人は仲良くしていた。あの頃と同じような関係で、子供に目を細めながら。
「おむつ辺りが無難だけれど、これも良いんじゃない?」
「どれどれ?」
陽が指さすところを覗き込む文人。子供の為のグッズではなく、母親を労わるような緋菜へのギフトである。そうだね、と仲良く頷き合う二人。陽の膝には猫が一匹、幸せそうに喉を鳴らした。
成瀬家には子供はいない。猫と犬が一匹ずつ。そして、陽と文人。二人と二匹は、緩やかに細やかで幸せな日々を送っていた。家族の形はそれぞれだ。どんな形であっても、他人がとやかく言う筋合いはない。それがその家族の幸せの形なのである。
誰にも言えない苛立ちを、誰にも言えないもどかしさを、誰にも言えない苦しみを、誰にも言えない怖さを。打破し、明らかにし、解消し、守り抜いた。その秘密は、四人の幸せな記録である。
―完―
秘密 小島のこ @noko_kojima
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます