第37話 〈小話〉脳裏をよぎる大事な人
そこには、『
首を左右に振って、肥大しそうだった緊張の唸り声を振り払い、深く呼吸をして、「よし」と小さく声にだすと、思い切って軽くノックし、「失礼します」と断わりを入れつつ扉を開く。
そうして目にしたのは、使い古された人形のように色艶を失った
妙に顔が白い。柊で顔を合わせたときも血の気の引いたような顔をしていたが、あれよりも酷い。
ベッドの上で、上半身を起こした状態になって慎ましく窓の外を眺めているが、その目つきが露骨に澱んでいる。本来は綺麗なアーモンド形をしているはずだ。その魅力的な目に、女としても、そして
だが、それが今はどうだろうか。まるで死んだ魚のようだ。もちろん体調の影響もあるだろうが、それだけでは説明がつきそうにない。
「こんにちは、
声に反応し、
けれど、
寝返りを打つかのような単純な姿勢の変化なのか、あるいは来訪者が誰なのか遅れて理解して静かに拒んだのか。どちらとも受け取れるし、そのどちらでもないような、ひどく微妙な反応。いずれにせよ、
しかしそれも想定の範疇だ。めげることなく、あえて窓と
そのように工作を講じても、視線が交わったのはごく僅かだけだった。
「お体の具合はどうですか」
「……」
「今日は、大事な話があってここに来ました──と、その前に、まずはこれをお返しします」
「あなたの大切なものを奪ってしまって、本当にすいませんでした。……ただ、今までこれを所有していたのは、私個人の事情であって、
「……」
「では本題に入りますが、話というのは他でもない、
言い終えてしばらく反応を待ったが、
「……おそらく、あなたは
「……」
「だから、あの人はあなたを騙していたとか、そういうわけではないんです。本当に、あの人は何も覚えていないし、何も知らなかった。だから──」
「帰って」
ようやく返ってきた
「そうはいきません。話はまだ終わっていませんから」
「話すことなんか何もないし、あなたの話も聞きたくない、って言っているのよ。それがわからないの」
「それじゃあ、あなたは、6年前のあの日、どうして
「……もう、どうでもいいのよ。そんなことは」
単に自分に対して反発しているだけか、それとも変に強がっているだけか。しかしどちらもしっくりこない。一体何を考えているのか。
「それがあなたの本心とは思えませんけど」
「それならそれで構わないわ。あなたに分かってほしいとも思わないし」
ここで
なるほど……この人は強がっているのではない。生きることに対しての意欲や執着を失くしているのだ。
それはなぜか? ──そんなことは、いまさら問うまでもない。
けれど結局、復讐劇は失敗に終わり、しかも体も不自由になってしまった。併せて、縁を切ったはずの柊にも、ニコラス学園にも、もう戻ることもできない。今までに築いてきた交友関係も、もう誰との繋がりもない。
つまる話、居場所がないのだ。ずっとこの病院で、何をするでもなく、誰と会うでもなく、ただ死ぬまで生き続ける。それが今の
だから、
もう復讐をすることもできない。だから、真犯人とか、そんな話なんかに興味もないのだろう。むしろ意図的に、余計に興味を持たないようにしているのかもしれない。
人生の袋小路に陥っている
もうどうでもいいと、そう思ってしまうのもわかる。無理もないと思う。
でも、こちらの気持ちもわかってほしい。
少なくとも、
そして願わくば、どうか
なにより、
──だが、いくら幾万の言葉を並べようとも、心の門を閉ざした状態の
それならばいっそのこと、強硬手段を執るしか道はなかった。幸いにも、
人外の眼は、次第に自ら妖艶な輝きを灯しだし、その色味と光量を徐々に強めていく。これにはさすがの
「何をする気なの」
「話を聞いてくれそうにないので、実際にお見せしようと思って。6年前のあの日の私の記憶を──あのとき、屋上で
「やめてよ……そんなもの、もう見たくない」
そこで
怯えるのも無理もないことだろう。たしかにこの眼は禍々しい。この眼を向けられれば、誰だって危害を加えられると思って畏怖することだろう。そんな反応はこれまでに何度も、それこそ目にしてきた。
ただ、
ならば、父親が亡くなるその瞬間をもう一度目にするのが怖いのか。
それとも、
はっきりしないが、いずれにせよ、真実を教える上では、それらは避けては通れない道だ。
そして、真実を教えないことには、ふたりが和解することなどあり得るはずもないだろう。
「大丈夫、誓って危害を加えたりはしませんから。信じてください」
そうして
そんななか、
ついに知り得た真実を吟味するかのように、
「どうでしたか。これがあの日の真実です。
「……そうみたいね」
「ええ。ですから──」
「でも、それが何だっていうの」
「……え」
「さっきから言ってるじゃない。もうどうでもいい、って」
それは、とても意外な展開だった。
もちろん、記憶を伝播したところで
切るべきカードを切っても好転しない事態に苦慮していたところに、さらに予想外の展開が追加される。
「そんなことよりも、あなたにひとつ、頼みたいことがあるんだけど」
「た、頼みたいこと、ですか? 私に?」
「そう。私の記憶をね、消してほしいの。6年前、
突然のことに、耳を疑わざるを得なかった。今度は
「……何を、言っているんですか」
「別におかしいことを言っているとは思わないけど。私は、他の人が知らないようなサンタの秘密をたくさん知っているのよ。柊のこととか、ニコラス学園のこととかをね。それに、あなたのことだって。あなたの顔も、声も、昔とは比べ物にならないほど、今ははっきりと頭に焼き付いている。今あなたがその眼で見せたものだって、もう鮮明に覚えてしまっている。良かれと思ってやったんでしょうけど、そのせいで私はさらにサンタの秘密を知ってしまったの。それを放置しておいていいの?」
「あなたがサンタのリーダーだっていうのが本当なら、情報漏えいを阻止するために、是が非でも私の息の根を止めるべきなんじゃないの。それこそ、お父さんのように」
「……アレを見たあとで、わざとそんなことを言っているんですか」
水を得た魚のようだった
それにしても、一体何の目的があって
先日、
だが、今の
「もしかして、あなたは……死を、望んでいるんですか」
ただ、
何故ですか、とはさすがに聞けなかった。それこそナイフで傷口をえぐるような愚問でしかないことは重々承知している。代わりに、「それはできません」と添えた。
「なんでよ」
「私たちサンタは盗賊ですが、決して人の命だけは奪わないと、そう誓いを立てているからです」
しかし、杞憂に終わらず、やはり事態は悪化した。
「どうしてよ。
思いのほか重みがある言葉に、
誰も止める者がいないことをいいことに、
「どうして、こんなふうになってまでして、それでも生きていかなきゃいけないの。どうして……」
「……やはり、後悔しているんですか。敵討ちが完遂できなかったことに」
「そんなんじゃないっ!」
「あなたの言う通りよ。たしかに後悔しているわ。でも違う。私が後悔しているのは、そんなことじゃない!」
「……」
「たしかにショックだった。
「……え?」
「つまり、
感情を逆撫でしかねないと危惧しながらも、しかし言葉を選ばずに、単刀直入に尋ねる。だが意外にも、
「こうして、一日中ベッドの上にいるとね、つくづく思い知るのよ。結局、どう転んでも、私に後悔しない道なんかなかったってことが。
「……」
「でも、そうやって目を逸らし続けるのにも、もう疲れちゃった。かといって、前を向くなんてこともできるわけないし。もう何もできないし、どこにも行けないんだもん。それに……私にはもう何も残ってない。大切だったものもそうでないものも、全部この手で切り捨てちゃったんだから。そんな私に残っているものといったら……そうね、この、死にたい、って気持ちだけかな。フフッ。わかるかな、あなたに」
こうなってくると、
しかし一方で、新たな発見もあった。
「わかってくれなくてもいい。でも、私が苦しんでいるってことはわかるでしょ。だからお願い。少しでも私を不憫だと思うなら、いっそのこと、私の記憶を消して。今すぐに」
これにどう切り返せばいいのか
でも、だからといって、
そんなことをしたら、サンタのせいで断絶されてしまった
なにより、……昨日ここを訪れた
……そうだ、これだ。これしかない。
「すべてを失ったと言いましたが、はたして本当にそうでしょうか」
「……どういう意味?」
やや遠回しな表現に、案の定、
「
「……嘘よ。
「嘘じゃありません。覚えていますか、私とあなたが柊で遭遇したあの日のことを。たしかあの時点ではまだあなたも柊の一員だったはずですが、あの時点で
「それこそ嘘よ。わかっていたって、それじゃあ、どうして──っ」
そこで
察するに、『どうして止めようとしてくれなかったの』とでも言いたかったのだろうか。
けれど、そう言い切ってしまうのは虫がいいというか、責任転嫁以外の何物でもないような気がして憚られた、といった様子が窺える。
たしかに
「たしかに……あなたの言う通り、
「……その様子だと、
「約束?」
「ええ。その昔、たった一度だけしたことがあると
そこで
「なに? また何か私に見せるつもりなの」
「ええ。これからお見せするコレは、先日、私とあなたが柊で邂逅した、あのときのものです。コレを見れば、
「……よしてよ。さっきから言っているでしょ。もうこれ以上、何も知りたくない。記憶を消さないって言うなら、これ以上、私を……余計に貶めないでよ」
でも、心の隅では、そうであってほしいと願っているようにも見える。
知りたいけど、知りたくない。でもやっぱり知りたい。その真偽を──と、このようにどっちつかずの終わらない思考にもがいているのが、ありありと伝わってきた。
そんな
「私が本当にあなたを貶めているのかどうかの判断は、コレを見てからにしてください。それでは……いきますよ」
その言葉を引き金に、一点に留まっていた光が、洪水の如く室内を侵食した。次の瞬間、
そこは、
「戻してる、って、吐いてるってこと?」
途端、
たちまち視界は懐に向かい、そして右手が上着の中に入り込む。なかから出てきたその手には、菜の花色をした、星型の何かだった。それを指先でいじると、突如、オルゴールのようなメロディが鳴りだした。そこで
「どうしたのよ、急に」
「どうしたもこうしたもないでしょう。
「ん、何のこと?」
「惚けないでくださいよ。今のって、6年前におにーちゃんが殺してしまった、あの
「ああ、そのこと。そうよ。その娘よ」
「……ずいぶんあっさりと認めるんですね。それにしても、なんでその人が、よりにもよってここに?」
「あたしが探してここに連れてきたのよ。お前が
「ど、どうしてそんな危険なことを。そんな報告、聞いていませんよ」
「そりゃあそうよ。
「もう、ふざけないでください!」
「なによ、大きな声なんか出して。思春期?」
「そりゃあ大きい声を出したくもなりますよ。私の知らないところで、こんなことが起きてたなんて。どうして今まで気づかなかったんだろう。ここにだって何度も来て──もしかして、調整していたんですか。私が柊を訪れる日程を。あの人と遭遇しないように」
「バレちゃ仕方ないか。ま、それなりにね。とはいえ、お前自身、
「どうしてあの人をここに連れてきたのか、それはまだ聞いてませんよね」
「どうしてって、『世間で公表されてない違法な
「そういうことを言ってるんじゃありません。いちいちはぐらかさないでください。どうしてわざわざあのふたりを巡り合わせるような真似をしたのか、って聞いてるんです。あのふたりは、生涯出逢ってはいけないふたりじゃないですか」
追及に、
「
「それって……おにーちゃんの、ですか?」
「そう。罪滅ぼしのために、
「……そう、ですか」
──それを、
「んなわけないでしょ。嘘よ、今の」
「え?」
「だから嘘。ルドルフだった頃の
「な……どういうことですか」
「カマかけた、ってこと。お前の潜在意識を知るためにね。ねぇ
「べ、別に私は、そんなつもりじゃ……でも、少なくとも柊で引き取る必要はなかったんじゃないですか。柊には、おにーちゃんが──」
「あいつはもう、お前の大好きだったおにーちゃんじゃない!」
今度は
「あいつはもう、昔のことなんかこれっぽっちも覚えちゃいない。それはこの6年ずっと傍にいたあたしよりも、実際に
「…………」
「今のではっきりとわかったわ。お前は
そこからおよそ十数秒のあいだ、ふたりは沈黙を貫いた。
「……痛いですね、耳が」
「とか言って。口うるさいと思ってるんでしょ」
「まさか。これでも、
「よしてよ、そんな大昔の話は」
「でも……それとは別に、現サンタのリーダーとして、私はこの件を報告します。どうか恨まないで下さいね」
「構わないよ。あたしもいつかはバレることだと思ってたしね。勝手にしな。でも、そっちのほうでどういう結論になったとしても、
「ナハハ。
「……」
「それに、ひょっとしたら
「まあね。さっき
「そこまでわかっているなら、むしろ今のうちに手を──」
「それはできないわ」
「ど、どうしてですか? やっぱりそれも、雅さんが大事だから?」
「それもあるけど……あたしはね、約束したんだよ。ずっと前、
「…………」
「だからあたしは、
「いえ、そんなことは……でも、そうすると、仮に
「えー、あたしに聞かないでよそんなの。今の話、聞いてた?」
「でも、今の状況から推測するに、そうなる可能性は少なくないと思いますよ。本来なら、こういう私怨絡みの問題は、その……おにーちゃんにしたように、私の
顔色を窺うような
「必要なら、そうする他ないんだし。どうするかはお前が判断すればいい。今のサンタのリーダーは
「で、でも……それでいいんですか?
「いいも悪いもないわよ。
「仕方ない、って……すごいですね、そんなふうに割り切れるなんて」
「んなわけないでしょ。
こちらを見据えた
「で、でも、
「そういうことはね、もうしないって決めてるのよ」
「そう……ですか」
「もしも
「強いですね、
「強くなんかないわよ。いつだってあたしは、強がってみせてるだけだって」
その瞬間だけは、いかに
「わかりました。近いうちにそれが現実になるかもしれませんから、覚悟だけはしておいてください。私の言えるのは、もうそれだけです」
「うん。いろいろと任せちゃってごめんね。あの子のこと……頼んだわ」
──ここで記憶伝達は終了し、元の病室が、
静かな病室に、鼻をすする音が続く。
「……
きっと、
「さっき、あなたがまだ目を覚まさないでいる間に
「……るり、さん……っ」
「
「……っ」
「今度はあなたの番じゃないですか。約束を守り、貫き通すのは」
「……え」
「しっかりと生きるって、それが
もう少しいろいろと言いたいところではあったが、余計な装飾にしかならないと思い、自重する。
それが功を成したのか、
──だが、本題はここからである。
「記憶を消さないと決めたなら、今度こそ、6年前の真実に、きちんと向き合ってみませんか」
何が言いたいのかを察したらしく、少しして、
訪れたばかりのときとは違って、それなりに会話も続くようになっていたが、振出しに戻ったかのように再び
ならば、
「あなたは、
なのに、よりにもよって反射的に出てきた言葉はこれだった。
もっと慎重に、丁寧になるべきだったのに、どうしてこれを選んだのか
「私もです」
「思えば、私たちの間には、不思議な共通項があります。同じ人を愛しているということ。そして、その人を傷つけたということ。傷つけたことに対して、その加害者である私たち自身が傷ついている、ということだって。唯一違うのは、私はすでにその愛する人を葬ってしまったけど、あなたはそうではない、という点です。だから、謝ることができる。どんなに傷つけてしまっても、たとえ瀕死の重傷を負わせてしまったとしても、それでも、謝ることができるんです。私と違って」
忘我して熱く語っていた
「でも、許して……くれるかな」
予想に反して、
加えて、許してくれるかなと口にしたその様子が、親に叱られるのに怯える子供のように見えた。あんなに暴れまわっていた人物のしおらしさを目にして、どうしてか庇護欲がそそられた。全体的に、なんだか可愛いとすら見えてきて、自然と顔が綻んでしまった。
おっといけない、大事なところなんだから、と
頭のいい
けれども、「大丈夫、許してくれますよ」と
自戒して思案し、大事な言葉はやはり
そこで、ひとつの案が思いついた。
「じゃあ、試しにこれを使ってみましょうか」
「それは?」
「これは、『ベツレヘムの星』っていう、サンタ専用の通信機器です。これで、
「どうしますか。これを使うかどうかはあなた次第です。でも、こんなことができるチャンスはもう他にないのも事実です」
催促しているような圧が隠しきれなかったが、
遅れて
「聞くわ。
「そうですか。わかりました、それでは準備しますから、ちょっと待っていてくださいね」
ここで、ふたりが仲直りをする、と
始めの間は、間近で見ても、それが
「
そして横長の机に『ベツレヘムの星』を置いて、じっと聞き耳を立てる。あとはもう、たとえ何があっても、声も、物音を出さないようにするだけだった。
──そうしてふたりの会話が終わってから、
九死に一生の思いだった。
盗聴というのは我ながら名案だと自負していた手前、まさか
その上、死にたかったと叫ぶ始末。こんなものを
だが、それらも
とにかく、お膳立てはここで終わりだ。あとはもう、ふたりに任せるほかない。
この先はもう、ふたりの問題なのだ。
車椅子を準備をしているような音が聞こえてきた所で、
「どうでしたか、
まったく、これからここに想い人が来るというのに、なんて顔をしているのだろうか。優しく微笑みかけながら、そばにあったティッシュで
ティッシュを処分し、籠った空気を新鮮なものに入れ替えるために窓を半部ほど開ける。
「それじゃあ私は行きますね。邪魔者はとっとと退散するに限りますし。近いうちにまた来ます」
少しおどけながら、
大丈夫だとは思うが、万が一にも殺伐とした空気になってしまった場合、いち早く察知するための予防策としての意味合いだ。
ここに来る
「待って」
扉に触れるすんでのところで、呼び止める声がした。その場で振り返る。
「たしか、
正面を向いて姿勢を正す。
「あなたは何も悪くありません。悪いのは私たちサンタです。こちらこそ、謝罪が遅れました。……いろいろと、本当にすいませんでした」
そして
「申し訳ないのですが、今は時間がなさそうなので、日を改めて、また謝罪に来ますので」
「そんなことはもういいから。いろいろあったけど、全部たまたまだったんだよ。きっと」
その声で、頭を上げる。見ると、
「──あ」
「? どうかしましたか?」
「ううん、なんでもないの。思い出したっていうか。ちょっと、面白いことを思いついただけ」
面白いことってなんだろう、と疑問に思ったが、時間も惜しかったので特に追究することなく、扉に触れた。
「どうせまた、この『ベツレヘムの星』ってやつで、私と
背中に浴びせかけられた声に、
「今度ここに来たときに、感想を聞かせてよね。ちょっとだけロマンティックに演出してみるから」
『ベツレヘムの星』のことを言及されるとは思いもせず、つい動揺を見せてしまったが、どういうわけか非難される口調でもなければ、むしろ盗聴を歓迎するかのような調子だったのも気になる。
悪だくみを考えているような物言いにすらも聞こえたが、敢えてここは
「上等です。でも、もしも三文芝居なら、私の吹き出す声がここに漏れ聞こえて、せっかくの演出とやらも台無しにしちゃうかもしれませんからね。覚悟しておいてくださいよ」
「望むところよ」
売り言葉に買い言葉のようになってしまったが、それでもふたりは、揃って微笑んでいる。
入り口に立つ
赤い悪魔と赤い糸 八木うさぎ @yagi-usagi
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