ハゲにはハゲの乳酸菌
斧間徒平
ハゲにはハゲの乳酸菌
高度に発達した科学技術は、これまで未到であった超深度海底に人の調査の手を届けることに成功した。
海底でのんきに細胞分裂を繰り返してきた無垢な細菌は、ついに弱肉強食の海の上へと運び上げられたのである。
未知の細菌を手にした人類は、実に利己的に、それらを人に有用か否かで分類していった。
哀れ細菌は、宇宙の如く広大なシャーレに入れられ、適切な温度管理の下、細胞分裂を促進させられた。
結果として細菌学は大いに発展し、人類の健康増進に大いに役立てられることとなった。そして、細菌学の発展は、とうとう細菌の微細な声さえ捉えられるレベルに至った。
「人間ってさ、俺らに勝手にフレーズつけてるよな」
「あれって、商品化される先で違うらしいよな。お前はなんて言われてんの?」
「守り働く乳酸菌」
「あー、お前もうすぐカルピスに就職だな。大手じゃん。体にピース」
「そういうお前は?」
「ヒトにはヒトの乳酸菌」
「もう市民権さえ得たフレーズだな」
「そこの君は?」
「目には目の乳酸菌」
「ハムラビ法典かよ」
「そこのお前は?」
「歯には歯の乳酸菌」
「だからハムラビ法典かよ」
「そっちのお前は?」
「ハゲにはハゲの乳酸菌」
「お前もハゲてるみたいだな」
ハゲにはハゲの乳酸菌 斧間徒平 @onoma_tohei
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