smily days ~ゆっくりいこうよ~

若星 明花

第1話

 虚しい。寂しい。もう何回呟いただろうか…

          ✽


 僕の名前は、桂 翔悟。産まれつきの脳性マヒで下半身がうまく動かない。そして、両親ともうまくいっていない。

だから、普段は何もする事が無い。やる事があるとしたら、ゲームか在宅で出来る程度の仕事位だ。そして、たまに外に出てリハビリや趣味の卓球をする。


そんな時、僕を支えてくれるのが幼馴染である東 呉葉だ。呉葉は発達障がいであり、てんかん症でもあるが、僕の事をさり気なく癒してくれる存在であり、頼れるパートナーだ。暇で寂しい時は彼女とメールで雑談をする。


ある日、卓球の大会に行く前にいつものように僕は彼女にメールを打った。


「これから卓球の大会なんだけど、応援してほしいな。」

「いいよ。」


彼女は前に述べた通り、発達障がいなので「○○して欲しい」

として欲しい事等は言わないとわからない。

ちなみに、僕達はLINEを使わない。何故なら僕の両親がSNS嫌いでLINEを使わせないからだ。


外に出る時も、彼女が手伝ってくれる。他の人は手伝ってくれない。


昔、修学旅行の班分けをする時にこんな台詞を言われた事がある。


「お前とは一緒に行動したくない」


と。

何故なら、僕と一緒に班を組むと自由行動の時にあまり遊べないから。

わかっていたけど、辛かった。

今でもこの台詞だけはトラウマとなっている。


「それで、仕方なくうちらの班に入ったんだよねー…」


近くで呉葉が呟いた。


「でもさ、一緒に過ごしてみたらかなり楽しかったよねww」

「そうだねw」


そして、僕達は二人で笑った。


「助けてくれるって思ってても、実際そうはならないんだよね。」

「きっと、皆何処かで思っちゃうんだよ。『こいつとは一緒に行動したくない』って。」

「でもさ…『助けて』とも言えないんだよね。下手すると過剰反応されちゃうかもしれないし、場合によっては大袈裟だとも言われちゃうから…」


そう、呉葉の持っているてんかん症は自分で意識できずに倒れてしまう。数分程で意識は戻る為、安全な場所に運んで安静にしておけば済む。

ただ、いきなり倒れてしまうものだから、回りの人は動揺して救急車を呼んでしまう事が多い。


そのためか、遠足等の校外学習では僕と呉葉のセットは当たり前になっていた。

そうしているうちにだんだん、お互いの気持ちがわかるようになっていた。


「だからさ、うちらはうちらでやってくしか無いんだよね。」

「ゆっくりいこうよ。お互いに。」


僕達は微笑みあった。


「ってか危ない危ない!大会遅れちゃうから!!急がなきゃ!!」




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