貴方がそうなら私はこう

斧間徒平

貴方がそうなら私はこう

 彼は私の幼なじみ。幼稚園の頃から一緒にいる。家が隣、クラスも一緒。兄弟よりも仲が良い。


 彼はちょっと抜けている。宿題をよく忘れるし、携帯の画面はいつも割れている。


 私は彼のことが好き。

 だけど、彼が私に振り向いてくれたことは一度もない。永遠に離れず、永遠に近づけない。まるで私は彼の衛星。


 彼は残酷にも私にアドバイスを求める。私以外の女と上手くいくためのアドバイスを、私に求める。


「どうやって誘おう」


「何をプレゼントしよう」


「どこにデートに行こう」


 その質問の一つ一つが私に刺さる。

「誘われない」私、「プレゼントされない」私、「デートに行けない」私が悲鳴を上げる。


 だから毎回、せめてもの抵抗をする。彼が幸せになれるように。彼があの女に振られて、私と結ばれて幸せになれるように。


 今日も彼はアドバイスを求めて、無邪気に私のところにやって来た。今度の女はマッチングアプリで知り合った女。

 メールをして、映画の趣味が合ったことを嬉しそうに話す彼。今度、初めて会うらしい。羨ましい女。私は彼と待ち合わせしたこともないのに。


「どうやって待ち合わせすればいい?」


「こう伝えればいいよ。『コンタクトレンズつけて待ってます』って」

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貴方がそうなら私はこう 斧間徒平 @onoma_tohei

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