クリスマス編
第404話 公平とモテ期
「失礼します! き、桐島先輩はいらっしゃいますか?」
今日も元気に生徒会活動。
花梨と毬萌が2人で終業式の予定表を校内に貼って回っている。
俺も行くと言ったら「おつかいならコウちゃんにお願いするのもアリだけど、校内を回るのは効率が悪いからナシなのだっ!」と、チャオズ認定された。
鬼瓦くんは珍しくまだ来ていない。
さては、勅使河原さんとどこかでイチャイチャしてやがるな?
結構、結構。
そして俺はお留守番。
しかし、留守番しといて良かった。
ちゃんと来客があったじゃないか。
ついでに俺をご指名である。なんとお目が高い。
見たところ彼女は一年生である。
なるほど、さては恋の相談だな。
今日に関しては予想が結構イイ線行っていたのが騒動の始まり。
「おう。いかにも桐島公平だぞ。まあ、お入りなさいよ」
「あ、いえ、その、あの! だ、大丈夫です! ……こ、これ、読んで下さい!!」
「おう。なんかの陳情か? 確かに受け取りました」
「で、では、失礼しました!!」
「おう。せっかくだから茶でも! ……あー。行っちまった」
鬼瓦くんが相手ならともかく、学園内でも屈指の接しやすさを誇る、花祭学園のヌルヌル
察するに、相当な恥ずかしがり屋さんだと思われる。
さて、何部の誰がどう困っているのかしら。
えらく可愛らしい封筒をひっくり返すと、裏にはハートのシール。
女子ってハートが好きだわね、と、少しほっこり。
花梨とか、ラインのメッセージにハートが乱舞してるもんな。
「ただいまーっ! 戻ったよ、コウちゃんっ! 寒いーっ!!」
「本当に、今日は冷えますねー。あたし、お茶淹れますね! 公平先輩も飲みます?」
「おう。頂こうかな」
「ほえ? コウちゃん、お客さん来たの?」
「おう。一年の女子が、ついさっきな。手紙置いてった」
「そうなんですか? 一年生の子なら、あたしに言ってくれたら手間が省けたのに、なんだか申し訳ないですね」
「そう言われりゃ、そうだわな。まあ、えらい緊張してたみたいだから、人と話すのが苦手な子なのかもしれん」
「それで、どうなお手紙ーっ?」
「お茶入りましたー。はい、毬萌先輩はミロですね!」
「みゃーっ! ありがとーっ!!」
「ええとな、あー。拝啓……。まあ、この辺は飛ばすか、丁寧な手紙だなぁ」
「へぇー。しっかりした子なんですね。公平先輩のほうじ茶も入りました!」
「なになに、桐島先輩の誰かのために本気になれる姿って、ステキです? えー。よろしければ、私と、ふがっ!? お付き合いして下さい!?」
「ほへ?」
「えっ?」
「「えええええええええええええええええええええええええええええっ!?」」
「熱ぃ!! ちょ、花梨、花梨さん!? ほうじ茶がぁぁぁぁ!! 俺の顔面にほうじ茶がぁぁぁぁぁっ!!」
全員で絶叫するパターンって珍しいわね。
とりあえず、俺が猫舌で良かった。
花梨の淹れてくれたほうじ茶は俺の適温に設定されており、顔面にぶっかかっても火傷をするほどではなかった。
猫舌ばんざい。
「こ、こここここ、コウちゃんっ!? これ、これって!!」
「おち、落ち着き、毬萌先輩! 落ちつ! 公平先輩、胸触っても良いですよ!?」
「おい、ちょっ! 二人とも、落ち着きなさいって!! 近い近い近い!!」
あと花梨さん、何言ってんの!?
あまりにも自然に言うから「おう」って触っちゃいそうになったよ!?
触っていないけどね!?
「すみません。遅くなってしまいました。……皆さん、おしくらまんじゅうですか? 良いですね、今日は特に冷えますから」
「おに! 鬼瓦きゅん!! ちょっと助けて!! このままじゃ、圧死する!!」
迫りくる生徒会シスターズの魔手から救われた俺。
大根抜くみたいに、ずっぼんと壁とシスターズの間から引き抜いてくれた鬼瓦くん、マジ鬼神。
ああ、この胸板、安心するなぁ。
そして、情報を共有。
本来ならば、恋文を貰った事を吹聴するなどマナー違反である。
これに関しては、俺が悪い。
でも、みっともなく弁明させてもらうと、俺がラブレター貰うって、思う?
ほら、ゴッドだって首を横に振る。
神のみぞ知らないレベルの奇跡なんて、エノキタケには想像もつかないよ。
「そう言う事でしたか。納得です」
「ど、どどどどど、どういう事かな!? 武三くん!?」
「何がどうなって納得なんですか!? 適当な事言うと、怒りますよ!?」
「タケちゃん、あかん。この子ら、あかん。もう、さっきから目がマジなの」
「いえ。だって、桐島先輩、今一年生の間で話題の人ですから。男子からは元々人気がありましたけど、最近は女子たちの間で人気が高まっていますね」
「ほえ?」
「はい?」
「「ええええええええええええええええええええええええええええっ!?」」
もっと驚け?
驚いてるよ。だって、俺より二人がすげぇリアクション取るんだもん。
見たことある? うちのシスターズがこんなリアクション芸するの。
ないでしょう?
普段から叫んでる俺が言うんだから、間違いないのよ。
叫び疲れてその場に座り込む毬萌と花梨。
床は冷たいから、そっちの椅子にしときなさい。
そして鬼瓦くんの解説が続く。
さすが、鬼はこんなパニックにも動じない。鬼神どっしり。
「桐島先輩のファンは元々一定数居ましたよ?」
「えっ!? マジで!?」
「そんなことないよぉ! コウちゃんの事好きになる子なんて、いないもんっ!!」
毬萌よ、かつて花梨が告白してくれた時と言ってる事が全然違うんだけど?
「そうですよ! 腕だってこんなに細いし、胸囲なんてあたしの方が大きいんです!! あ、あと、あたしだって一年生なのに、そんなの把握してませんし!!」
「お前ら、そんな全力で否定せんでも……。あ、鬼瓦くん、続けて?」
「桐島先輩のお人柄に惹かれる人は男女問わずいましたが、先日の暴力沙汰、あれがきっかけになって、桐島先輩熱が一気に高まったみたいです。それから、冴木さんは桐島先輩に夢中過ぎて、周りが見えていなかったのではないでしょうか」
「あー。マジかー。俺にもついにモテ期が来ちまったかー」
人生で一度くらい言ってみたかったセリフが言えた。
そんな事ってあるんだね。
普段萎れているエノキタケが爆ぜたから、女子のハートに刺さったのかしら?
そう言えば、聞いたことがある!
年頃の女子は、ちょっと不良な感じの男子に惹かれるものだと!!
俺は、ちょい悪
「コウちゃん、コウちゃん!」
「おう。どうした? ははは、なぁに、ゆっくり落ち着くまで待つぜ?」
「みゃーっ!! コウちゃんが、急にモテキャラっぽくキャラ作り始めたぁー! うわぁーん!! もうやだぁー! こんなのコウちゃんじゃないーっ!!」
お前、普段から俺の事、どんな風に見てんの?
「……公平先輩」
「おう。……Oh」
花梨さんの瞳に光がないね。ヤンデる時の花梨さんだね。
「今、予約しておきました」
「うん。何を?」
「すごく有名な神社です!!」
「おう。えっ? 何のために?」
「お
「なんで!? 俺、何にも
「絶対にオカルト的な現象が起きてるんですー! そうに決まってるんですー!!」
お前たち、普段から俺の事、どんな風に見てんの!?
「分かりました。現場の声に詳しい方をお招きします。少々お待ちを」
それから2分と少々。
彼女がやってきた。鬼の彼女が。
「えっと、桐島、先輩は、とっても、人気があります、よ? 私のお友達、も、すっごくポイント高い、って、言ってました」
「ありがとう、真奈さん。ほら、言った通りでしょう?」
「おう。ところで、俺の両足にしがみ付いて、俺を地獄に落とそうとしている乙女が2匹いるんだけどさ、すまんが助けてくれるかい?」
「了解しました」
そして俺は本日2度目の収穫をされ、鬼瓦くんの肩と言うセーフティーゾーンへ移動。
妻瓦さんの許可は取ってある。
戸愚呂兄スタイル。あれ、これ意外と居心地がいいなぁ。
「あ、桐島、先輩。どなたから、ラブレター、貰ったんですか? 私、知ってる子、かも、です」
「おう。そうだった。まだ差出人見てねぇんだよ。えーと、
「モルスァ」
花梨が泡吹いて倒れた。
「そ、その子、テニス部の、とっても可愛い、子です、よ! 桐島先輩、すごい!!」
「僕もお名前は存じています。冴木さんほどではないですが、人気者です。さすがは桐島先輩、高めをツモってきましたね」
「おい、どうした? 毬萌?」
毬萌さん、油の切れたゼンマイ人形みたいにカクカクと動く。
そして口を開く。
「澄み渡る夜空に瞬く星がいっそう美しい季節となり、一方では本格的な冬将軍の到来です。なにかと気ぜわしい毎日ですが」
時候の挨拶。
ただでさえくそ忙しい年の瀬。
それなのに機能不全に陥った生徒会。
今回は俺のせいなのですか? 教えてよ、ヘイ、ゴッド。
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