『しあわせのとり』解説
『しあわせのとり』本編はこちら。
https://kakuyomu.jp/works/16816927861676628798
今回の作品はいろいろな解釈ができる物語として書いてみました。
少々難解な話になってしまいましたが、私が何をもとにこの作品を書いたのかを書き残しておきます。
また、解釈は人それぞれであり、読んでくださった人の数だけ答えがあってよいと思います。こちらに書かれている解説もあくまで「私が持っている答え」でしかありません。
●国王はなぜ本を禁書にしたのか?
本の内容を振り返ってみましょう。
「世界から争いをなくす方法」⇒わかる
「誰もが幸せに暮らせる国の話」⇒ちょっと胡散臭い
「肉体を捨て精神だけを鳥のように羽ばたかせる方法」⇒ヤバそう
つまり、国王は純粋に「この本やべーな」と感じて禁書にしました。
とはいえ、現代日本ではいろいろな思想や宗教が存在することを許されていますので、国王にも暴君味があることは否めません。
「どこか遠い、価値観の違う国の話なんだな」くらいに思っていただければ。
●本を焼く者は人も焼く
「本を焼く者は、やがて人間も焼くようになる」という言葉があります。
ハイネの言葉だそうです。
物語の中とはいえ、とうとう私も本を焼いてしまった。
……と一瞬落ち込みかけましたが、よく考えたら既に作中で人を大量に焼いていたことを思い出しました。
現在は非公開にしている『猛火の英雄』は、人がたくさん焼け死ぬ話でした。
(;´∀`)
●なぜ本は鳥になったのか?
最初は「本物の鳥を焼く話」になる予定でした。
ですが、少々残虐すぎるかなとリアル知人に相談しました。
「こういう話を書こうと思っているのだけど、どうかな?」
「鳥が可哀想🥺」
「じゃあ、本が鳥に変わることにしよう。それなら本当の鳥じゃないからいいよね?」
「うん😊」
●なぜ鳥は焼かれたのか?
今回のKACのお題が「焼き鳥が登場する物語」だからです。
とりあえず鳥を焼いとけばいいかなって。
フォロワー様から「いや、それはちゃうやろ」と鋭いツッコミをいただきました🤣
●のべらちゃんさんといえば「うどん」、トリといえば「焼き鳥」。
カクヨムには「トリ」という丸っこいフォルムの公式キャラがいます。見た目はフクロウっぽい感じ。
自虐ネタなのか、たまに公式Twitterで「焼き鳥」というワードを呟いています。
トリ「カクヨムコン前に焼き鳥を食べると、みんなもトリになれるらしいです(嘘)」
https://twitter.com/kaku_yomu/status/1465539268412346369?s=20&t=Q_6kFEF94QJO4Q-jZzMn2Q
今回のお題「焼き鳥が登場する物語」が発表されたときにも、引用RTには困惑の声が。
https://twitter.com/kaku_yomu/status/1503929295386779655?s=20&t=Q_6kFEF94QJO4Q-jZzMn2Q
まあ、せっかくの機会なので、今回このお題が出た時点で「よっしゃ鳥を惨殺しよう」と心に決めました。
ちょっとトリに対する加虐心が抑えきれませんでした😌
●鳥は何を暗示しているのか?
これは「作者」という立場を離れて一個人としての解釈なのですが、私は「鳥」は「どこにでもいる」「殺しても殺してもキリがない」ことの象徴だと思います。
江戸時代にキリシタンは激しく弾圧されていましたが、弾圧されればされるほどかえって彼らの信仰は厚くなっていったのではないかという気がします。
作中の鳥たちが虐待されてもさえずり続ける場面は、弾圧されても信仰を捨てようとしなかったキリシタンたちとどこか重なります。
また、物語として「鳥が焼かれる理由」が必要だったので、「じゃあ禁書の言葉をさえずる不思議な鳥の話にしよう」と思いつきました。
●お母さんが読み聞かせているのは童話なのか?
厳密には童話ではありません。
一般大衆に向けて「わかりやすく書かれた本」といったところです。
そのため、「精神」や「禁書」など子どもには難しい言葉も出てきます。
また、「鳥がさえずっている禁書の内容」と「お母さんが読み聞かせている本」は同じ宗教についてのものですが、前者は「経典の内容そのもの」、後者は「その宗教についてわかりやすく説明された本」という違いがあります。
このあたりはちょっと構造が複雑になってしまったなと反省しています。
ここだけの話ですが、今回のKACのお題は「焼き鳥が登場する物語」だそうですが、公式のツイートをよく見ると「お題にまつわる文章を600~4000字以内で投稿してください!」とあるんですよね。
それを元に考えると、たとえばお題が「第六感」なら「第六感にまつわる文章」ということになりますが、今回のお題を厳密に考えると「焼き鳥が登場する物語にまつわる文章」ということになりませんか?
つまり作中に「焼き鳥が登場する物語」を登場させなくてはならない……?
そんなわけで、保険をかけてこのような作りになりました。
どうやら私の他にもそう感じた方がいらっしゃるようです。
まあ、考え過ぎかもしれませんね。
●なぜ読み聞かせをしているのか?
宗教の刷り込みは子どものうちから。
作中に登場する母親は良く言えば「信仰心が厚く」悪く言えば「宗教かぶれ」で、自分の子どもにも教義を教え込もうとしています。
たまにTwitterに「新興宗教にはまっている親に育てられた私」みたいな感じの漫画の広告が流れてきますが、あんな感じです。
私には毒親にしか見えませんが、これもまた人によっては「愛」と解釈することもあるかと思います。
●最後のお母さんのセリフの意味は?
1990年代のアメリカで実際に起きた集団自殺事件に着想を得ています。
(センシティブな話なので実名は伏せますが、キーワードで検索していただければわかるかもしれません。)
遺体は寝台に横たわった状態だったそうです。
「肉体は仮の乗り物に過ぎず、彗星が地球に近づくタイミングでやってくる宇宙船に魂を乗せる」という目的で集団自殺したようです。
『しあわせのとり』のラストシーンは、この事件をもとに書いてみました。
つまり、これからお母さんは子どもを殺し、自分も後を追う予定です。
彼女にとっては愛情のつもりなのでしょう。私にはよくわかりませんが。
最後まで読んでくださってありがとうございました!
【短編集】ハルカ★BOX ハルカ @haruka_s
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