ガラス細工
パリン パリン
一定の間隔で音が鳴り続ける
パリン パリン
動きに合わせて鳴る音
パリン パリン
その音はもう聞きたくない
パリン パリン
やめて
パリン パリン
もうやめて
パリン パリン
「もうやめてよ!」
思わず叫ぶ
それでも音は
止まらない
そして彼が最後の一つを手に取る
なんとしてもあれは壊されたくない
彼に駆け寄って
両手で彼の手を覆う
彼の手の中には
ガラス細工
「お願い、もうやめて」
「止めるな」
かつて聞いたことのない低い声
「俺にはもうこんなもの、必要ない」
「あんなにガラス細工を愛していたじゃない」
「俺が愛していたんじゃない
彼女がガラス細工を愛していたんだ
でも
愛してくれる彼女は
もういない」
そんなことは知っている
彼の恋人は浮気をしていた
そして彼に別れを告げたのだ
私は彼にとってただの幼馴染みにすぎない
それがどれほど
哀しくて
辛くて
切ないか
彼は何も知らない
私の一方的な想いでしかない
だけどそれでも
彼が幸せなら
それでいいと
思っていたのに
彼の幸せは逃げてしまった
するりするりと
影のように
彼を嘲笑うかのように
逃げてしまった
私は彼がガラス細工を作る姿が好きだ
それは彼の恋人も同じだったようで
彼はその恋人の言葉を励みにしていた
だけど彼の恋人は
もういない
だから彼は
全てをなかったことにするために
恋人のために作った
彼が愛したガラス細工を
壊し始めたのだ
その行為は
彼の心を
少しずつ壊していくように見えた
では
全部壊したら
”彼はどうなるの?”
私の心に
不安が広がる
咄嗟に止めた最後のガラス細工
結局彼は
壊してしまうのかな
だって私は
ただの幼馴染みだから
Fin.
セツナ物語 セツ @no_727
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