Gain 23:Resistance And Self-Destruction Are Synonymous
「レジスタンス!?」
「そうです。私たちはイゼベルの解放を目的として活動しております。
最終的な目標はミントンの討伐。
劇場で救出した女性はレジスタンスのリーダーであった。
エレーは困り眉をしているが、その瞳は凛としており、強い意志を湛えていた。
「……レジスタンス、かっけえ……。」
「あ、ツカサもそう思った!?やっぱり帝国よりレジスタンスでしょ~!」
「ヒーローはレジスタンスになって体制に反旗を翻す!これよね!」
三人は古き良きRPG脳なので、レジスタンスと言われると直ちに主人公的で格好いいと思ってしまうのであった!
「もちろん協力するぜ!
俺、憧れでさ~、バイトの履歴書にレジスタンスって書きたかったんだよな~!」
「え、あっさり引き受けてくれるんですね……。
命に関わる危険なお願いだったのですが……、やはり勇気のある方々なのですね。」
「ま、私たちも目的は同じ。絢爛卿ミントンの討伐をしなきゃいけないのよね。」
「やはり、あなたたちはあのオスタータグを倒した大道芸人なのですね。
「ああ、確かにそれは俺たちだぜ。
まあ、リディアって子に頼まれて倒しただけだけどな。」
レジスタンスの仲間たちが集まって
「へえ、お前たちが飛竜卿を殺ったのか。まだ若えのにすげえな!」
「今日の劇場の騒ぎ、あんたらなんだろ?
なんか乱暴狼藉の限りを尽くして無茶苦茶にしたらしいじゃないか!」
「エレーの姐さんを助けてくれたのもあんたらなんだろ?ありがとうな!」
「なんであんたら肌の色がおかしいんだ?病気か?」
「え、このイケメン、なんでちんこ出してるのよ~!?」
「
こうして
* * *
三人は宿に戻り、全身のメイクも落とし、さっぱりとした。
そして彼らは平和ボケしているので、レジスタンスになったことをニヤニヤしながら喜ぶのであった。
「いやー、憧れのレジスタンス、なっちまったな~。
みんなの期待に応えて、イゼベルの街、救っちゃいますか!」
「そういえば僕たちが仲間になって、エレーも戻ってこれたから、次の作戦を開始するって言ってたね。詳しいことは明日会ってから説明してくれるらしいけど。」
アヤカは自動演奏装置に貰った鉄琴を武器に加工しながら言う。
「戦力を必要としているということは、戦闘を見越していると言うことよね。」
「あ、なるほど、明日も戦いか。俺も明日は歌いまくるぜ。」
「ツカサも歌いながら戦えるようになると良いんだけれどな~。」
「俺、二十五歳のときに中学生に泣かされるくらい喧嘩弱ェからな。」
「知ってるわよ。ヘタレ。」
「ま、何にしても、明日の戦闘は僕とアヤカでがんばりますか~。」
* * *
翌日の朝、三人は再びレジスタンスの秘密基地に赴き、エレーたちと合流した。
「来てくれたのですね、
エレーは美しいドレープのスカートに細身の革の上着を纏い、肩からはマントを下げ、背中には剣と槍を差していた。
「作戦って言ってたわね。一体何をするというの?」
「はい、今日はある場所の確保をしに行こうかと思います。
これは今後の作戦の要とも言える場所ですので、みなさんの協力が必要なのです。」
「要とも言える場所、新たな拠点かしら?」
「いえ、違います、それは、肥溜めです。」
「は?」
「え、うんことか溜めるアレのことか?」
「はい、そうです。うんことか色々汚物が溜まってる非常に臭いあそこです。」
「え、なんで?トイレ事情?」
「いえ、そういうわけではないです……。
絢爛卿ミントン、あいつはみなさん戦って判ったと思いますが非常に強い。
ですが、やつにも弱点があることが同志たちの情報収集によってわかりました。」
「え、まさか。」
エレーは真剣な面持ちで三人の顔を順に眺めると、深く頷いて話を続ける。
「そうです、やつは美しいものを司る
だからこそと言うか、むしろ当然の帰結だったのだと思います。
やつは、うんことか下品で汚いものに弱く、それを浴びると力を奪われるのです。」
「いや、だいたいの人ならそんなものかけられたら、普通にむちゃくちゃヘコむし、力の一つや二つ奪われて、無気力になると思うが??」
「そして、恐らくですが、豪華絢爛を掲げているやつならば、吐き気を催す感覚に襲われると思います。そこを突くのです。」
「うんこを頭からかけられたら私でも吐くと思うわ。」
「なあ、この作戦、大丈夫なのか?
というかこのレジスタンス、頭大丈夫か?」
「そう?僕は今の話聞いててツカサと仲良くできそうだな~、って思ったけど~。」
「今日の作戦は二手に分かれます、一つは肥溜めの確保、もう一つは一日にハチャメチャな量のうんこをする馬の奪取。私と
エレーはマントを翻すと美しい目ではるか遠くを見つめるように顔を上げた。
「大丈夫、私とみなさんならきっとやれます。」
* * *
そんなわけで四人は街の外れ、肥溜めの場所まで来たが、予想以上に魔族や魔物による警備が厳しい。まるでこの場所が重要であると言わんばかりだ。
「こうも厳重だとさすがにマジでミントンの弱点って気もしてくるわね。」
「情報に聞いていた以上に警備にあたる魔族たちの数が多いですね……。
さすがにこの数を我々だけで相手にするのは骨かも知れません。
ここは偵察に留めて、仲間を呼んでくるのが得策でしょうか。」
「いや、今やろうぜ。ここが必要なんだろ?
時間を置いてより警備を固められたら厄介だ。」
「そーそー、それに僕たちには音楽がある。」
「魔法と剣もね。あなたも戦えるんでしょう?エレー。」
「……わかりました、頼りにしています!」
ツカサは黄金の音声増幅器を二つ背負うとそのシールドをユメタローに接続する。
ローテンポの重いギターのリフレイン、張り付くようなドラム、それらを柱のように支えるベースライン。ツカサはうめき声をあげる。
演奏しながら藪から飛び出す
彼らの音は木々を震わせ、空気を支配し、肥溜めの水面を揺らした。
すると魔族と魔物はその音に狂わされ、互いに血を求め合うように殺し合い始めた。
まさに彼らのドローンメタルに相応しい光景である。
「これが、音楽の力……!魔族たちを狂わせ、私の力を増幅させている。」
魔物たちは互いに噛みつき合い、魔族たちは互いに首を締めてそのまま肥溜めへ落ち、溺れ死んでいく。そうでないものは一心不乱にヘッドバンキングをしている。
血に飢えた魔物や魔族が次々とエレーに襲いかかるが、彼女は魔法を纏わせた槍と剣による二刀流でそれらを軽々と屠った。
魔物の頭を魔法の籠もった槍で突くとその頭は破裂し、魔力を纏った剣で斬ると、まるで何度も斬りつけたような激しい斬撃が発生した。
さすがレジスタンスのリーダーだけあり、その実力は想像を絶するものだ。
「良いぜ~、このままキメちまおうぜぇ~!」
「そうはさせませぬぞ。」
現れたのは絢爛卿の執事。
長い顎髭を蓄えた老練な雰囲気を纏った魔族の男。
二本のショーテルを構え、エレーに襲いかかる。
ガードの上から更にその刃を届かせるショーテルの攻撃を防ぐには、槍での距離を保った防御か、剣による弾きである必要がある。
エレーはそれを即座に読み取り、魔族執事の攻撃をいなしていく。
だが、ショーテルの素早い動きと、差し挟まれる体術により、エレーと執事の戦闘距離は縮まっていく。
「く、この魔族、他とは違う!?
このままでは、相手のテリトリーに入ってしまいます!」
魔族執事はまるで動けば動くほど加速するようにその攻撃速度を上げていく。
ついにショーテルの鋭い一撃が、エレーの防御の隙間を縫って襲いかかる。
その瞬間、アヤカはその一撃を不思議な色に輝く古代の金属でできた剣で弾いた。
彼女は敵に秋波を送り不敵に笑う。
「ここからは、私の見せ場ね。」
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