Gain 21:Devotion
激しい破壊音にが劇場に響き渡り、観客も舞台の拷問人も警戒し硬直する。
そのとき、観客席の後方の壁が吹き飛び、巨大な何者かが現れる。
「あ、あれはベヘモトだと!?」
「な、なんであんなヤバい生物がこんなところに!?」
「遺跡に遺棄したんじゃなかったのか!?」
それは客席を吹き飛ばし、観客の魔族を踏み潰しながら舞台へと一直線に向かっていく。それを操るは
会場を破壊しながら舞台に上がると、ベヘモトは大きく咆哮をあげる。
舞台上の魔族がそれを止めようと魔力を集中させるが、それに反応してベヘモトは素早く重い右フックを食らわし、魔族は水風船のように弾け吹き飛んでしまった。
「や、ヤバい、強すぎる、一体何なんだ!?」
「ウィー・アー・
ツカサの暴力的なギターフレーズ、アヤカの骨太なベースのリズム、ユメタローの複雑なパーカッションのグルーヴが会場を包み込む。
「これが俺たちのユンボじゃあッ!!」
ギターが鳴る!ベヘモトは暴れ、壁を破壊する!
ベースがうねる!舞台をえぐり、豪華な拷問器具をベコベコにする!
ドラムロールをキメる!腕を振り回し拷問魔族をミンチにする!
「うおおお!?こんな、こんなばか……へぶッ!!」
豪華絢爛な会場は破壊され、血と肉が飛び散り、地獄の様相を呈する!
ツカサもアヤカもユメタローもトランス状態となり周りなど見えていない!
ベヘモトはその音楽によって踊り狂い、破壊衝動のままに暴れる!
「急いでベヘモトを止めろー!」
「衛兵!衛兵!」
武器を持ち集まる魔族たち、彼らはベヘモトを止めるために構える。
しかしこの恐ろしい怪物は汎ゆる攻撃をものともせず、魔族達の顔面を握りつぶし、足を持って地面に叩きつけ、鋭い爪で体をバラバラに切り裂く。
「こ、こんなの倒せるはずがない……!」
「手が負えないバケモノだったから遺跡に追いやったのに何故……。」
観客は人も魔族も
舞台の恐ろしき惨状に今スグにもパニックを引き起こし、逃げ惑いたいのに、彼らの起こす音の不思議な魅力に抗えずにいる。
舞台から飛んできた宝石で飾られたアイアンメイデンが、席で恍惚としている魔族を潰す。
「なんだ、この音は、正直興奮する!」
人間の拷問を見に来た人間の変態紳士はついに踊りだす。
それを見た魔族たちもつられて体を動かし始める。
舞台の人間達は飛び散る魔族の血と肉片をたっぷり浴びながら、踊り狂う!
狂気の宴!
人も魔族も血と音楽で異常な興奮状態に陥った!
ベヘモトを止めようと奮闘していた魔族は、大暴れの魔物に、引き裂かれ、投げられ、潰され、バラバラにされ、握りつぶされ、ついに全滅させられる!
そして巨躯を持つこの魔物は、金と宝石でできた豪華な拷問装置を持ち上げると、恐ろしい腕力でねじり切り、咆哮をあげた!
「キマったぜ……。」
まさかのスタンディングオベーション!
魔族と人間の両方から送られる称賛に
「この様子からすると、ここの出し物っていうのは、人間を拷問して殺すものだったみたいね。悪趣味な見世物だわ。」
「え、すごいね~!倫理観のなさ~!」
「お前が言うなよ!」
鎖に繋がれた人々は尊敬と畏怖を抱きながら彼らを見上げて言う。
「あの、あなたたちは一体……。」
「俺たちは
「ありがとうございます!あの、そのお体の色は、何かご病気を?」
「まあ、そうね、病気のメンバーがいるせいでこうなっているわ。」
「よっし、じゃあ僕の魔法で拘束を解いてあげるね~。」
「きゃあ!何故、お、お、おペニスを露出なさってるんですか!?」
椅子に拘束されていた女性含め、彼らはユメタローの能力で首輪はきれいに取り外された。解放された人々はみな一様に嬉しそうにしている。
苦しみ、痛めつけられ、殺されそうになったところを助けられて、涙しながら
「本当にありがとうございます、何とお礼を言ったら良いか……。」
「ま、気にすんなよ、流れさ流れ。俺もいいライブができてよかったぜ。」
「先程の音を出していた大道芸、あれがライブというものですか?」
「ああ、音を組み合わせて演奏っていうのをするんだ、それがライブ。
そしてその一連の音のことを音楽っていうんだぜ。」
「音楽……。なんと深遠な響きでしょう。」
三人はベヘモトから降りて魔物の死体から素材や道具を漁っている!
せっかく殺ったのだから戦利品が欲しいというRPG脳である!
彼らはあの遺跡でベヘモトに遭遇し、絶望的な状況にあったが、ツカサの
ジャパノイズ大好きっ子のツカサは、こいつで会場の壁を突き破って登場したら盛り上がるだろうと思いつき、ベヘモトをユンボがわりに使ったというわけである。
「へ、やりきったがこのライブハウスからはきっと出禁を食らっちまうな……。」
「相当殺したし、出禁で済めばいいけどね~。
ちぇ~、魔物ってなんなの、ろくなもの持ってないじゃん。
壊れていない武器を何本か頂いていけばいいかぁ。」
するとひときわ大きな拍手が会場に響く。
音のする方を見ると、貴賓席と思われる場所に美形の魔族がひとり。
「ブラボー、すばらしくプリミティブな見世物であった。」
しかしその顔には一つの笑顔もなかった。
「だが、僕の楽しみを台無しにした罪は重い。」
瞬きほどの速さでミントンは舞台に移動する。
「な!?いつの間に!?あの距離を今の一瞬で移動してきたの!?」
「僕は絢爛卿ミントンだ、お見知り置きを。
キミたちは報告にあった、オスタータグを倒したあの人間か?」
「こいつ、
ツカサの呼びかけに巨大な魔物の右腕が風を切りながらミントンに襲いかかる。
だが、その攻撃はそっと添えたようなミントンの左手によって止められる。
そして接触部分からベヘモトの右腕は徐々に黄金に変化していく。
「こ、これは、ベヘモトが金に変えられていく!?」
右腕から胴体へ、そして四肢から頭部に至るまでベヘモトは金塊となった。
「うおー!僕たちこれ売ったら大金持ちになれるんじゃない!?」
「!離れてユメタロー!」
ユメタローは金の輝きに魅せられて、のこのこと近寄ったところ、突如金塊が割れ、金の杭となって彼に襲いかかる!
間一髪のところ魔法の壁を発動させて攻撃を反らせたものの、金の杭が通ったところは恐るべき破壊の痕跡を残してえぐり取られていた。
「あ、危ない~。金を操る能力ってところかな?」
金の杭はミントンの背後に集まり、形を変えて槍や剣などの姿を取った。
「そのとおり。僕は触れたものを宝石や金などに変化させ、それを操ることができる。このように加工して装飾品にすることもできるぞ。」
そう言うと金の処刑器具の一つを愛しそうに触れる。
「これは拷問処刑した町娘を金に変えて加工したものだ。美しいだろう?」
「このクソサイコパス野郎が!許さねえぜ!俺たちがテメェをぶっ倒してやる!」
「こうも胸糞が悪い相手だと、気兼ねなくぶっ殺してやろうって気になれるわね。」
「え、すごい、僕にも一個くれないかなぁ~。」
ミントンと
観客は指笛と拍手でその様子を盛り上げる。
「あのオスタータグを倒したとかいう貴様らの実力、見せてみろ!!」
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