第一話

 ガタンゴトン、ガタンゴトン……。

 電車に揺られながら、久々に会う友人達に思いを馳せていた。

 最後に会ったのは、確か……大阪旅行の時だっけ?万博記念公園に行って、太陽の塔の前で皆変顔してバカな写真とか撮ってたっけ。

 あれからもう五年か……。懐かしいな。皆、元気かな。なんて考えていると、車窓から見える景色はのどかな田園風景から徐々にビルが見え始め、都会の様相を見せ始めた。

 しばらくすると、ビルの合間を縫うように電車は進み、目的の駅へと着いた。扉が開くと、懐かしい故郷の香りがした。ような気がした。たぶん、気のせいだけれど。

 わたしは電車から降りて一度、深呼吸をした。やっぱり、昔とは空気も違う、かな。振り返って乗ってきた電車を見ても、いつの間にか二両編成になっていたし、駅内部だって……。

 さて、ここからどう行ったらよかったんだっけ。確か、地図を送ってきてもらってたと思うんだけれど……。


「あれ、アキ?久しぶり」


 と、そんな声に振り返ると、そこには五年ぶりに会うハルがいた。


「久しぶり、ハル。てか、なんでここにいるの?」


「俺もちょうど着いたとこ。アキも、だよな?」


「うん」


「と言うか、最初から気になってたんだけど、その手に持ってるのって何?」


「え?これ?おばあちゃんが持ってけ、ってうるさくて……。まぁ、中身はまた後のお楽しみ、ってことで」


 わたしは右手に持っていた風呂敷包みを軽く持ち上げて答えた。ハルは何か、期待してるような感じになっちゃったけれど、仕方ないかな。でも、そんな大したものじゃないから見せたときの反応は少し、不安だな。


 目的のナツの家へと向かいながら色々と話していると、どうやらハルはよくナツと会っているらしい。前から二人はお似合いだと思っていたけれど、もしかしたら、付き合っているのかもしれない。

 あれ?もしかして、今日って二人の結婚報告だったり?もし、そうならいいな、だなんて一人で勝手に思っていた。ま、多分違うけれどね。

 そして、ナツの家へと着くと、ドアが勝手に開いた。と言うか、中からナツが飛び出してきた。


「アキー!久しぶり!」


「ちょ、ナツ、離してよ」


 急に抱きついてきたナツを懐かしく思いながら、無理矢理に引き剥がした。相変わらずだけれど、もう少し、その、距離が欲しい。嫌いじゃないんだけれど、たまに疲れるんだよね……。


「フユはもう来てるの?」


「え?あいつ?ベランダにいるよー。そんなことより、それってお土産?何何?」


「えっと、おばあちゃんから。何か、いい大納言あずきが手に入ったから、っておはぎ作ってくれた」


「やったー!ありがとー!」


「って、それ、おはぎかよ。なら、あの場で教えてくれりゃよかったじゃん」


「まぁ、そうなんだけど、何か、場の空気?的に」


「ま、いいけどさ」


 そんな感じでナツとも再会し、ベランダへと向かうと、フユが一人で本を読んでいた。わたしたちの姿を見ても何も言わず、黙々と読書を続けていた。

 まぁ、そうだよね。フユはそういうやつ、だよね。

 これで後一人、シキがいてくれたら完璧なのにな、だなんて考えていた。

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