エピローグ
北京にある中南海
「シュラン、フィラン。これはどういうことだ!!」
執務室で龍永平主席は机に新聞をたたきつけた。
ロイター通信やニューヨークタイムズやいくつかの新聞が乱雑に置かれている。
第一面に
「三峡ダムの正体は魔洸炉」
「中国政府の恐るべき計画の一つが破綻」
「三峡ダムは開放された精霊や龍神により破壊される」
「下流の宜晶、武漢、上海は水浸し。約四億人が被災、二千万人が避難を
余儀なくされる。死者は数千人以上と思われる」
第二面には泥まみれになった街や水没した町、村の写真があり、救助隊の
ボートに乗る被災者の姿が写されていた。
三峡ダムの真ん中に大穴が開き、頂上には流木や瓦礫がたくさん引っかかって
いる写真や黄金龍や白龍、黄金龍が上空に向かって青白い光線を放出する写真
まである。 動画にも大洪水で橋が流されたり、建物が流される映像だけでなく他の小型龍が重慶や他の街まで飛び回ったり、貴州省の村では龍神の咆哮と思われる音が響き渡り、四ケ所の都市で震度5の地震が連続で起こっているという映像もあった。
「想定外でした」
目が泳ぐシュラン。
「いくつかのタイムラインが消えた・・・」
フィランは真っ青な顔でどこにも属さない言語で絶句する。
シュランはあわててフィランの口をふさいだ。
「何か言ったか?」
龍永平主席はにらんだ。
「いえ・・なんでもありません」
シュランは首を振った。
「残りの宝を見つけてこい。失敗したらこの国から出て行ってもらう」
龍永平主席は声を荒げる。
「わかりました。ベストを尽くします」
シュランはフィランの腕をつかんで部屋を退室する。
早歩きで廊下を進む二人。
「シュラン。本気ですか?いくつかのタイムラインは消えました」
フィランは聞いた。
「わかっている。時空管理局が動いている」
シュランが答える。
「宇宙では新たな勢力が動いている。時空の宝を七つ集めているエイリアンが
いるそうです。それもスタークリスタルばかりです」
フィランが重い口を開く。
「ライバル勢力が気づいたか。奴らより早く手に入れよう」
シュランは真顔で言った。
那覇沖一〇〇キロの海上を航行するインビジブル号
飛行甲板に着艦したコーラルタグは艦尾側エレベーターにより艦内の格納庫に
収容される。
コーラルタグから船外に出てくるダスティたち。
「べラナ!!」
「アトリー!」
ダスティとアナベルはべラナとアトリーに抱きついた。
「頼仁さま。ご無事でなによりです」
黒沢執事が駆け寄る。
「彼らは国賓として迎えてくれた。それだけは間違いないと思います」
頼仁は笑みを浮かべた。
「西山隊長。戻りました」
本宮は報告する。
「よくやった」
笑みを浮かべる西山。
平野は本宮にそっと抱きついた。
「俺はまだ死んでないし、かろうじてアトリーたちのおかげで帰ってきた」
顔を赤らめながら離れた。
「ガーランド!!」
駆け寄るダスティ、アナベル、頼仁、テレーザ。
「よくやった」
ガーランドは笑みを浮かべた。
「これで終わりとは思えません」
ダスティたちの様子を見る不知火。
「私も終わりだと思っていない」
エミリーもうなづく。
「あなた方もそう思われますか。私もそうは思っていない」
アトリーはガーランドたちを見ながらうなづく。
「フィランやシュランだけでなく時空の宝がほしい奴は星の数ほどいますか?」
本宮が思い切って聞いた。
なぜそう思ったのかわからない。映画でもそうだが宝探しはライバル勢力がいる
と思っただけだ。
「フィランやシュランはタイムラインがなくなれば自分の世界に帰る。それだけ
ではなく本当にほしい連中が狙ってくるのは地球人だけでなくエイリアンにもいる。彼らは目的の物が入れば帰る。科学力が発展していない地球には興味ないからね」
アトリーが答えた。
「宝がほしいエイリアンに地球はどう思われている?」
エミリーが聞いた。
「ゴミ溜め。魅力的な資源もない未開拓地で知能の低いオスとメスがいるところ」
アトリーは答えた。
「そう思われている方が来なくていいかもな」
なんとなく納得する本宮。
「なんかホッとする。よけいな邪魔が入ってこないな」
不知火がうなづく。
「よけいな邪魔が入らなくても一流の宝探しがやってくる。そいつは本気で全ての時空、時間、時代を支配して願いをかなえたい奴でしょ」
エミリーが核心にせまる。
「なかなか鋭いね。それを我々・・・銀河連邦やコブラアイ、時空管理局は心配している」
懸念を言うアトリー。
「アナベルが言っていたダンカンのチームを呼んだ方がいいんじゃない」
エミリーがふと思い出す。
「もちろんそのつもりで信号は送った」
アトリーは答えた。
「新しいニュースが入ってきました」
男性アナウンサーが口を開いた。
「先ほど中国政府は国内にいる外国人の帰国を認めました」
女性アナウンサーが原稿をチラッと見ながら言う。
「方向転換をしたみたいですね」
「理由は明らかにしていませんが専門家の推測によりますが、一番の原因は龍神や精霊に三峡ダムが破壊されたことと思われます」
「ですが帰国できたとしても二週間の隔離となります。進展といば進展になります」
「帰国できるだけでも進展ですが魔洸炉が現在でも使われていたのは驚きですね」
「魔洸炉は古代~江戸時代まで使用されていました。理由は魔物除けの結界です。そんな大規模な物ではなく小規模で自分達の生活をまかなえる程度のエネルギーを精霊達と使用していたようです」
「共存できていたのですね」
「それが変わったのは産業革命ですね。石炭や石油に代わり原発にとって代わり、魔洸炉は廃れていきました」
男性アナウンサーは映像を切り替えながら説明する。
「それを中国政府は復活させてわざわざ巨大な龍脈にダムを造って魔洸炉を建設したようです。ダムの完成後は大地震や水害が頻発。四川大地震もエネルギーバランスが崩れて発生したと思われます」
「風水師によりますと地球には巨大な龍脈が複数あるそうです。三峡ダムはそのうちの一つを真っ二つにするように建設されました」
「それだとなんで自然災害が多発するのかわかるような気がしますね」
「そうですね。まだ中国外務省の会見は続いているようですね」
女性アナウンサーは話を切り替え画面を切り替えた。
「・・・リッグスさん、真島さん。中国と韓国がこれでおとなしくなるでしょうか?」
ミーティングルームで本宮は話を切り出した。
「おとなしくならないだろうな」
真島は答えた。
「フィランとシュランはタイムラインがなくなれば自分の世界に帰る。時空の宝は中国や韓国以外にもほしい奴らは星の数ほどいる。それにエイリアンがいるわけだし、エイリアンも本当にほしい奴は時空の宝を使って願いをかなえてすべての時空、すべての時間と時代を支配したいという奴だけだろう」
リッグスが推測する。
「そう思いますか。アトリーやエミリー、不知火さんも同じことを言っていました」
本宮が核心にせまる。
「そうだな。一回ホワイトファングのメンバーとも顔を合わせしないとダメかもな」
うーんとうなる真島。
「如月長官と相談だな」
リッグスはうなづいた。
重厚な扉が重々しい音をたてて開いた。
雲をつくような巨漢の二人にはさまれひょろっとした体の異星人が連行されていく。
廊下を抜けるとそこは兵士が並ぶ謁見室である。
異星人は突き飛ばされ、頭部を覆っていた袋を取られた。
「フィラン、シュランの仲間です」
巨漢の一人が口を開いた。
周囲を見回す異星人。肌はピンク色でスキンヘッド。黒色のサイバネティックスーツを着用している。
「これはこれはバックゴデック皇帝陛下。お目にかかれて光栄です」
ひざまづく異星人。
玉座から立ち上がる皇帝バックゴデック。
いならぶ兵士や自分を連行してきた兵士もそうだが男女ともに身長は三メートルを越える。
恐竜から進化したというのを情報で聞いているが実際に見るのは初めてだ。薄紅色のウロコは背中や腕、足にあり、顔は爬虫類を思わせ、彫りが深く、髪はレゲエ風の長髪を後ろに束ねている。肌の色は人間と同じ肌色である。そして男女共に軽装備のハーフアーマーを着用していた。
「この帝国領内で何をしている?スパイ活動か?」
見下ろすバックゴデック皇帝。
「いえ、観光です」
異星人が答えた。
「観光?ここには観光するものはない」
笑みが消えるバックゴデック。
「このスパイが乗っていた船はスパイ仕様で次元航行ができます」
くだんの兵士が答える。
「そうか。よくやった」
うなづくバックゴデック。
「いえ、決してそのような・・・」
目が泳ぐスパイ。
「フィランとシュランは失敗したようだな。おまえたちは失敗したら自分の世界に帰るだけだ。おまえたちが作った活動拠点は潰しておいた。手引きした奴らも残らずな」
バックゴデックは指をパチッと鳴らす。
正面のスクリーンにどこかの衛星や惑星の衛星につくった基地が瓦礫となり、そこにいた自分達に協力していた異星人たちの死体があっちこっちに転がっていた。
口をあんぐり開け唖然とするスパイ。
「次のチャンスにかけているだろうがチャンスはない。自分の世界に帰るだけだ。フィランとシュランにそう伝言しろ。我々の邪魔をするとああなるだろう」
スクリーンを指さすバックゴデック。
「・・・・はい!」
つばをごくっと飲み返事をするスパイ。
「こいつをつまみ出せ」
あごでしゃくるバックゴデック。
くだんの兵士二人に連行されて退室する。
バックゴデックは玉座の隣にあった杖に視線を移した。
杖は銀色で上部に七つの穴が円状にあった。五個の色とりどりの宝石がはめこまれ、あと二つはなかった。
「今度は俺の番だ」
バックゴデックは笑みを浮かべた。
ダスティと二つの宝 そして新型紅マダラウイルス ペンネーム梨圭 @natukaze12
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます