三つ首のマジュウ
時はオズワルドがバネのマジュウと相対していたその頃。
如月は目の前にたたずむ三つ首のマジュウを見ては内心冷や汗をかいていた。
「あー……のせられたまま勢いに任せて突っこんできたのはいいが、まさか一番ヤバそうな奴とやることになるとはなぁ……」
そうボヤく合間にも、三つ首のマジュウは唸り声をあげながらジリジリと如月へと歩みを進める。
その見た目はまさに怪物というにふさわしかった。
まずは顔。そう
次に身体。大きな三つの頭を支える首から胴体にかけては、桜庭の世界のもので例えるならば軽トラックほどの大きさはあるだろうか。
最後に手足。その胴体のたくましさに見合う鋭い爪は、切り裂かれれば肉ごと抉りとられるだろうということは容易に想像がついた。
つまりは、どんな攻撃をくらおうとも重症はまぬがれない。
三つ首のマジュウの血走った三
するとそれまで聞こえていた唸り声がピタリと止まり、マジュウが地面を蹴り飛び上がった。一気に距離を縮めたマジュウは、如月の頭上に向けて巨大な前足を振り下ろす。
「なっ!?」
とっさにその攻撃を横に跳んで避けた如月であったが、それまで彼の立っていた場所にはレンガが粉々に砕けた小さなクレーターができていた。
「あっぶねぇ! 少しくらいは手加減しろよな! あんなんで潰されでもしたら一撃で死ぬぞ!」
そう言って如月は刀を
体勢を立て直して刀を構えようとする如月であったが、その目の前へマジュウの三つの頭が大口を開き現れる。ガチン! という牙の合わさる音が彼の立っていた場所で鳴るが、しかしそこには如月の姿はなかった。
「くそ……こっちは一人だってのに、そんな連携しての攻撃なんてズルいだろう、が!」
体勢を低くして三つ首のマジュウの攻撃を避けた如月は、その低い態勢から再度マジュウの首元へと斬りかかった。
今度は斬りかかる瞬間にマホウを発動し、その影響で野犬の門いったいの気温がグンと下がる。彼の瞳が深い青色へと変わるとともに刃の触れた部分がパキパキと音を立てはじめ、マジュウの首に氷が侵食していく。
そして氷におおわれた部分へと如月が圧をかけた瞬間――その部分が粉々に砕け散った。
――よし、これなら十分にダメージを負わせることができる!
ギャインというマジュウの悲鳴が三つの口から上がり、その隙に如月はのけぞるマジュウの
しかし彼が顔を上げた瞬間。三つ首のマジュウの巨大な前足が彼の身体を横殴りにし、防御をする間もなく如月はあの黒い門まで弾き飛ばされた。
「いってぇ……。マジでバケモンかよ……。いや、バケモンであってるか」
身体全体を強打したものの、幸い骨を折るようなことはなかったらしい。如月はよろよろと立ち上がると手放すことはなかった刀を握りなおす。
三つ首のマジュウも先ほどの一撃がかなり
見合っていた時間はほんの数秒であっただろうか。先に動いたのは三つ首のマジュウであった。
三つ首のマジュウは地面を四本の足でしっかりと踏みしめると、それぞれの頭が如月の方へと向けられ大きく口を開ける。
「また食らいついてくるってか? そんな馬鹿の一つ覚えみたいな攻撃、そう何度もくらうわけが……?」
違和感とともに如月が感じたのは熱。まさにその熱は、目の前のマジュウの自分一人くらい軽々と丸呑みにできそうなほどの大きな口から発せられていた。
そのことに気がついた刹那。
「ッ!」
如月は危険を感じ、マジュウの正面からそれるようにして走りだした。
直後に聞こえる轟音。如月のすぐ横を今さっき感じたものとは比べ物にならないほどの熱量が過ぎ去り、熱の正体が判明する。
彼が門を離れ振り返ったわずかな時間の間に、三つ首のマジュウの口から放たれたのは三本の
「――ははっ、こりゃあいよいよ本格的にマホウでドンパチやろうってか? いいぜ、こっちも急いでるんだ。そろそろ終わらせようや」
不敵に笑った如月の足元から冷気がただよいはじめ、対照的に三つ首のマジュウの口元からは炎の塊が溢れでる。
そして如月はようやく刀を構え直すと、今度はマジュウに向かって真正面から立ち向かっていった。
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