第30話 幻蔵院夢蔭流絲奏術
J・Jとギャッツビー、それに緑扇宮が爆発した空を見上げると、爆発で
「あれは!」
宮が、最初に出てきた
「姫様!」とギャッツビーが叫んだ時、宮の妃だというあの少女の乗る噴気式摩托車が、他に数台を引き連れて宮達の乗る
「戯達まで一緒だぜ! あいつらまだ追いかけっこしてたのかよ! こいつぁ、面白くなってきたぜ! 宮様、乗んな! あんたの大事な妃を追いかけるよ!」
J・Jはすかさずエンジンをかけ、宮の腕を左手で引っつかみ後部シートに乗っける。
「ちょ、ちょと、J・Jさん?!」という宮の叫びを無視するように、
「しっかり掴まってなぁ!」と言いながらJ・Jは加速器を吹かし、昇降機が地表に到達、扉が開いたと同時に発進! 恐れ多くも
「待ちやがれぇ!」と、片腕をぶん回しながら叫ぶ戯に向けて、少女の乗る噴気式摩托車の
「うひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
簾=能と簾=歌、稲節の乗る
宙に咲く爆炎!
その中から、余りの速度で目ん玉クルクル・宮を乗っけたJ・Jの噴気式摩托車が猛スピードで現れ、戯の摩托車に並ぶ。
「戯! 挟み撃ちだ!」
「J・J? それに宮様まで?! おっしゃ! 了解!」
戯とJ・Jは二手に別れ、簾=歌、稲節達がそのまま追跡する。
官吏や内侍達が内裏の殿舎の外に飛び出し見上げる空を、あっちゃこっちゃと飛び回る、少女の乗る噴気式摩托車。殿舎すれすれまで急降下。巻き起こす風で、女官達の着物の裾を捲り上げたり、森の中に突っ込み、スターウォーズさながらに木々を避けながら疾走している。そして、森を抜けた所で、
「!」
「そこまでだぜ、姫さん!」
待ち伏せていたJ・Jの出現に、少女は摩托車を急停止! ならばと、左に転針しようと摩托車の首をそちらに向けると、今度は御法を乗っけた戯の摩托車が現れ、森から抜け出た簾=歌・簾=能と稲節の内、稲節が右に回り込む。
「姫様! おいたはここまでですぞ! さぁ、いい加減に駄々を捏ねるのはお止めになって下され! 宮様もこうして迎えに来て下さったのですから」
だが宮様、完全グロッキー!
その緑扇宮を見やった少女は、トンでもない台詞を吐く。
「何故に、そやつの妃にならねばならんのぢゃ! チュチュは真っ平御免ぢゃ!」
「!」
その言葉に同皆驚愕する。主人の記憶から生まれたグミが、主人を受け入れぬ
意志を示すだと? そんな、稲節達の一瞬の動揺をついて、少女の摩托車がそのまま垂直に飛び上がった。
「チィッ!」
J・J達の摩托車もすかさず垂直に飛翔し、その後を追う。
「稲節殿! これ以上姫さんに好き勝手やられたらこの内裏がぶっこわされちまう! あの摩托車を打ち落とすぜ?! いいな!」
J・Jは、摩托車のハンドルの間にある
数秒黙って三思していたモニター上の稲節が一決、
〃よし! だが、姫様を決して傷つけてはならんぞ、J・J!〃
「任せな! そんでもって宮様、運転任せた!」
「ええっ? 任せたってそんな無茶な!」
慌てふためく緑扇宮をまたまた無視して方向盤を放したJ・Jは、摩托車側部に収納してあったランチャーを取り出し座位の上に立ってそれを構えた。J・Jの股の間から宮はそのまま方向盤を固定。J・Jは照準を二十m先を飛行する噴気式摩托車の噴気噴射口に追随する。そして、
「いっけっ!」
発射された弾が見事に命中! 爆発! ではなく、着弾と同時に強力な接着剤が噴射口を覆った。異常を感じたセンサーが自動的にエンジン停止。同時に緊急停止用の落下傘が強制的に開く筈、だった。だが、接着剤が
助けて!
「!」
突如緑扇宮の心の中に、あの少女のものとは違う、別の、そう大人の女性のアルトが響いた。何処かで聞いた覚えがある声……。そう夢の中で自分を蘭蛇帝アマデウスに導いたあの声!
「まずい!」
J・Jが、突如かかった加速Gに、「うっ!」と
「後を頼みます!」とJ・Jに怒鳴った。
「あれじゃ、中宮様の屋敷に墜落するぞ!」
戯の
「あれを見るにゃ! 宮様が!」と指さす。
宮は躊躇せずに摩托車を離れ、宙に身を踊らせた。
「宮様っ!」
稲節達が見守る中、泳ぐようにして少女の乗る摩托車に取り付いた宮。少女は失神して いたが、飛び散った接着剤が彼女の足までを摩托車に固定していた為に振り落とされていない。眼前には、昇降機の中でJ・Jとギャッツビーから説明された中宮位魔奴宦〃
(この摩托車は間違いなくあの屋敷に墜落する!)
宮は、少女の単衣の生地の手触りを確かめると覚悟を決めて、助かる確立が一番高い方法を選択した。宮は少女のべべを剥ぎ取る。そう、彼女の
「『幻蔵院夢蔭流絲奏術』!
第30話 了
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