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「何ともこれは有り難い場所に来てしまったものじゃ。ちょっとお参りしてみますかのう……」
おばあさんはこれも白キツネの導きだと信じ、そのまま鳥居をくぐります。入ってみるとその先でも赤い鳥居が何百、何千と連なっているではありませんか。その神秘的な光景におばあさんは感動します。
「こんな景色は生まれて初めてじゃ。きっと奥にはものすごく有り難いお宮があるに違いない」
おばあさんは手を合わせて今この瞬間にこの場所に来られた事を感謝し、鳥居をくぐり続けました。辺りには濃い霧が漂っており、有り難そうな雰囲気が半端ありません。鳥居をひとつくぐる度に罪が許されているように感じ、おばあさんの足取りは自然と軽くなっていくのでした。
それからどれだけの鳥居をくぐった事でしょう。途中でおばあさんは何度も疲れて休憩を取りました。それほどまでに参道は長かったのです。
けれど、ようやくその努力が報われる瞬間がやってきました。鳥居の先が見えてきたのです。
「ほおお、これは何とも立派な……」
無事に鳥居を抜けた先にあったのはとても立派な本殿でした。建物全体が発光しているのか光り輝いており、まるで有り難さが形を取ったみたいです。
おばあさんが手を合わせながら近付くと、本殿の扉が勝手にギイイと音を立てながら開きました。この現象に、おばあさんは驚いて腰抜かします。
「一体何が起こっておるのじゃ……」
「よく来られたのう、おばあさん」
本殿から出てきたのは、まばゆすぎる光の塊です。おばあさんは思わず目をつぶりました。
「ま、まぶしいっ」
「おお、これは済まなんだ。これでどうじゃ」
「はぁ、有難うございますじゃ」
困ったおばあさんを見て、光の塊は出力を落とします。そこで浮かび上がったのはとても有り難い感じの服装で徳の高い見た目の人の姿でした。それを見たおばあさんは、思わすつぶやきます。
「あんた、神様かい?」
「そうとも、私は神様じゃよ。ようこそ、神域へ」
神様に出会ってしまったおばあさん、あまりの出来事に頭の中が空っぽになってしまいました。とは言え、神様に出会うだなんて普通、有り得ない訳で。普段そこまで信仰心が厚い訳でもなかったおばあさんは、どうして自分が神様に会えてしまったのかと頭を悩ませます。
もしかしたら、あのキツネに騙されているのかも知れません。
目の前の現象は本当の出来事なのか、それとも――。
ここまで神様っぽい存在なのだし、信じる
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894280196
何か胡散臭いので信じない
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894280890
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