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「さて、この村は一体どう言う村なのかのう……」
何とか心の中の悪魔の誘惑を断ち切ったおじいさんは、浜辺の村を散策します。余所者の来訪を快く思わない閉鎖的な集落なら、この行為は致命的なものであるのでしょう。おじいさんは全くの無防備で警戒心もなく、鼻歌を歌いながら辺りをまるで品定めするみたいに歩いていたのですから。
けれど、どうやらこの村の人々は旅人に優しい性格の人が多かったみたいです。初めて見るおじいさんに向かって、みんな気軽に声をかけてくれたのですから。
「おや、初めて見るねぇ。この村には何の用だい?」
「いや、ただの観光ですじゃ。ワシは海をあんまり見た事がなくてのう」
「はぁ。ではこの海を存分に楽しんでくだされ」
「では、その言葉に甘えさせてもらいますじゃ」
おじいさんは村から見る海の景色を、頬に潮風を受けながら存分に堪能しました。しっかり海の景色を記憶に刻みつけ、そろそろ帰ろうとしたその時です。おじいさんの前に数人の村人がやってきました。
「はて? なんですかのう?」
「おじいさん、今日は村の催し物があるんだ。ご馳走も出るんだが、食べていかないか?」
「ほう、ご馳走とな……」
ご馳走の話を聞いたおじいさんは、急にお腹が空いてきました。クンクンと辺りの匂いを嗅ぐと、確かにいい匂いが鼻孔をくすぐります。すぐ近くでその催し物は開催されているみたいでした。
ここで、おじいさんは顎に手を当てて考え込みます。
折角のお誘い、これは誘いに乗らねば失礼と言うものじゃろ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894178220
村にやってきたばかりの旅人にこの誘いは申し訳ない、辞退しよう
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894178560
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