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「よし、誰もいないな!」
心の中の悪魔に負けたおじいさんは羽衣を盗んで自分のものにしてしまいました。それで何食わぬ顔をして浜辺の散歩を続けます。ある程度歩いていたところで、絶世の美女が困った顔をして近付いてきました。
「あの、すみません。この近くの木に羽衣がかかっていたと思うのですけど、知りませんか?」
「はあ……。それはどう言ったものなのですかな?」
おじいさんは普通にとぼけました。美女はおじいさんのその態度を何ひとつ疑いもせず、つらつらと事情を話し始めます。
「私は天女なのですが、ここに遊びに来ていたのです。あの羽衣がないと戻れません。だから困っているんです」
「ほほう……」
「お願いです。羽衣を探してください。見つけたら何でもしますから」
「今、何でもっていいましたな? 天女に二言はありませんな?」
おじいさんはそう言うと、懐から羽衣を取り札しました。天女はすぐにそれを奪い取ろうとします。おじいさんはひょいと身を翻して、天女の手をかわしました。
「それ私のっ! 返して、返してください!」
「いんや、返しませんぞ。ワシの願いを聞いてくれねばのう」
「な、何が望みなのですか!」
「ワシの嫁になってくれ」
お約束ですが、こうして天女はおじいさんのお嫁さんになりました。え? おばあさん? 天女が嫁になったのです。おじいさんはもうとっくにおばあさんの事は忘れ去っていました。
おじいさんは浜辺の村に腰を落ち着けて、漁師の真似事をしながら暮らすようになりました。そうして、ことあるごとに嫁の天女の自慢をして村人からはちょっと煙たがれたりして。ただ、仕事っぷりは真面目だったので、徐々に村の人々にも受け入れられていくのでした。
そんなある日、嫁の天女がしくしくと泣いています。おじいさんはどうしたものかと腕を組んで考えました。
一体どうして泣いているのだろうかと嫁に話しかける
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894177431
何か良からぬ事を企んでいるに違いないな、無視だ無視
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894177722
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