朝九時四十分に私は「鴨御飯」を作った

隅田 天美

料理の素人(一般人)が架空の料理を再現してみた実話 その10

「いつか、絶対、作ってみたい」料理というのが私の中であった。

 池波正太郎『剣客商売』の副読本『剣客商売 包丁ごよみ』に出てきた「鴨御飯」である。

 ただ、その道のりは決して楽ではなかった。

 そもそも、近所のスーパーや肉屋さんで「鴨肉」なんて売ってない。

 いや、『燻製鴨肉』なら売っている。

 すでに加工済み。

『鴨肉はレストランなどに卸されて一般には出回らない』

 という思い込みが出来た。


 ある日。

 私は意味もなく通販サイトAmazonを見ていた。

 すると、こんな文字が出てきた。

『冷凍鴨肉』

 原産国フランス。

 即、注文した。


 冷凍された鴨肉様がやってきたのは、金曜日だった。

 カチカチに凍っている。

 まずは、解凍である。

 ネットを調べると「冷凍庫から冷蔵庫に出して八時間で解凍できます(レンジ解凍などするとドリップ【肉汁など】が出てしまい美味しくありません)」と書いてある。

 なので、土曜日はジムなどに行き寝る前に冷凍庫から冷蔵庫に移し替える。


 そして、今日。

 八時間すぎた鴨肉様はまだ、カチカチだった。

 ただ、包丁の刃は入るのでまず、脂身と肉に分ける。

 脂身は細かく刻みに出して出汁を取る。

 その間に少し大きい鍋に水百五十cc、醤油二百cc、酒二百五十四ccと削いだ鴨肉様を入れ加熱。

 これは本には書かれてないが、出汁を取った後の脂身も入れる。

 冷えた鴨肉様の脂出汁(こんな言葉ないけど)は米と一緒に土鍋に入れて炊く。

 沸騰させて火を止め二十分ほど放置するとご飯完成。

 つまみ食いでご飯だけを食べる。

 少しだけ芯が残っている感じだが美味しい。

 さすが、鴨肉様。

 伊達にフランスからやって来たわけではない。

 

 ご飯を丼によそって煮た鴨肉の肉(と脂身)を乗せ食べてみる。

 ……

 え?

――『包丁ごよみ』ならセリを乗せるはずだ?

 うん、正直なことを書こう。

 私は山菜系がほぼ食べられない。

 セリも当然ダメ。

 でも、食べてみて思ったことは『長葱も合うんじゃない?』ということ。

 だって、『カモネギ』なんて言う言葉あるぐらいだ。

 また、出汁など使わないのでかなりストレートに鴨の味が楽しめる。

 個人的には、脂身もおすすめ。

(ただし、脂ギッシュ)


 時代劇小説の料理再現を原産国フランスの鴨で調理するという、不思議というかシュールな料理ではあったけど、今回も美味しかった。

 今度は鴨肉を鶏肉にして長葱も入れたら、これも美味しいのかもしれない。

 もう、完璧に違う料理だけど……


 鴨肉を存分に味わい人にとてもお薦めの料理だった。


 ぜひ、おためしを。


 追記 鴨肉様をお出迎えするために約三千円かかっております。

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朝九時四十分に私は「鴨御飯」を作った 隅田 天美 @sumida-amami

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