第11話 後日談

「龍ー!」



飛鳥は走った。


自分の弟のいる家へ。



白いワンピースを靡かせて、息を切らしながら家のドアを開ける。



簡素で質素な家だが、人が住んでいる気配がするそこは、飛鳥と龍斗の家だ。



時間もまだ早朝ということもあり、龍斗も家にいるだろう、と。



手にもっている合鍵で、鍵を開け、中に入っていく。


「龍!」



龍斗の部屋を覗くとまだ、龍斗は夢の中らしく、すやすやと寝息を立てて、眠っていた。



寝ているのだから、そっとしといてやろう、とは飛鳥は思ってはいない。



なんたって、一大事なことがあるのだ。



そう、自分が決めたことを龍斗に話さなければならないのだ。



飛鳥は容赦なく、龍斗の布団を剥いだ。



思いっきり。



「龍ってばっ!起きなって!」



「ぎゃっ。」



思いっきり剥いだおかげで、龍斗はびっくりして目を覚ました。



目覚めは、最悪だ。



「ね、姉さん!何するのさ!」



目を開けてみればそこにいるのは、血を分けた実の姉で。



まだ、寝ていたかったのに、と龍斗はぼやいた。



が、飛鳥は全く気にする気配もなく、にっこりと笑っている。








「あのね、龍。あたし、吸血鬼になったから。」










「は?」





あっけらかんと言い放つ飛鳥に、龍斗はあいた口が閉じられない。



今、姉はなんと言ったのだろうか。



にわかに信じられない言葉を発したような気がする。



もう一度頭の中でリプレイしてみる。



確か、吸血鬼になったと・・・。



「ぇええええ!!!!」



その日、朝から立花家に龍斗の絶叫が響いた。





もちろん、近所迷惑だったのは、言うまでもない。



「・・・で、こいつが聖。

あたしを吸血鬼にしてくれた奴なんだ。」



「おや、飛鳥。その紹介はないんじゃないか?

始めまして、龍斗君。

飛鳥の恋人の聖だ。よろしく。」



ものすごい形相で


「説明して!」


と怒鳴る弟をなだめて、飛鳥は一通り説明すると、一緒に来ていた聖を龍斗に紹介した。



まだ、納得していないような龍斗だったが、飛鳥はあえて、納得するまで説明する気はないらしい。



彼女の言い分では、どうせ、一緒に住むんだから。そのうち分かるだろう。



と、いうことらしい。



「よ、よろしくお願いします」



気を取り直した龍斗は、聖に引きつった笑みでそう答える。



どうして、笑顔がつくれようか。



「じゃあ、龍。あたし、聖のところで暮らすから、龍も来なよ!」



と、弟の返事も聞かぬままに、飛鳥は龍斗の腕をとった。



「え?ね、姉さん!?」



驚く龍斗にはまるでお構いない飛鳥。



これからも、龍斗の受難は続くのであった。








To be continue...?






―――――――――――――――――

最後までお読みくださりありがとうございました!この作品は昔々、某イベントにて配布した同人誌の改稿版になります。どこかで読んだぞ。と、いう方もいらっしゃるかもしれません。

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捕らわれた心 ~吸血鬼と禁断の恋を~ 葉柚 @hayu_uduki

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