第2話 spark

「新見さん、ちょっと良いかな」

彼が初めて私に声をかけてくれた日、それは異動した初日始業後まもない時間帯だった。


部署自体中途採用の方々で編成されているのもあったから、同期その前後とずーっと一緒みたいな場所から見ると、とても新鮮で空気も澄んで見えるようだった。

直属の上長も配属まもなく、挨拶回りでデスクを空けていたため

手持無沙汰にしていた時、彼からのお声かけだった。



ちかちかと星屑が散りばんだように、目の前は一瞬瞬いた。



「えっと…」

「あ、ごめんね、急に声かけちゃって。お客様問い合わせ部門の夏川です。夏川大智って言います。ちょっと僕のチームの面々にも紹介したくって。今良いかな。」

伏せ目から、不意にじっと射るような瞳の強さ。

小麦色にやけた肌、引き締まった体を包む紺色のスーツ。清潔にセットされた髪型。

自信家、と誰もが彼を見ると言うだろう。


―――落ちた。

不意の自身の脳内の一言にハッとする。

居どころが落ち着かない。


そんな様子が彼には緊張しているように映ったのか、

大丈夫、年の近い子ばかりだから、と柔らかく促されながら連れだって彼のチームの島へ歩いた。


ろくな挨拶もままならぬまま、自デスクに戻りひとつため息をこぼす。

先ほどの一言を打ち消すように。


左薬指に光るゴールドの輪に目をやり、PCへ視線を戻した。

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可惜夜 世良ふぃ @seraseraserafi

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