『夢であって欲しかった』の蔗境に入った時、私は「あ、そういうことかっっっ」と首を三度縦に振っていた。
カップラーメンを待ってる3分間で読み終わる短編だが、読後の何とも言えない余韻は映画1本見終わったかのようである。
まず『夢であって欲しかった』の魅力は、独特な世界観で読者を引きずり込ませることにある。私は読み進めるうちに不思議な感覚に襲われたのだが、沢尻エ〇カもこんな感じだったのかと思ってしまった。ちなみに私は薬物乱用をしていない。しかし覚醒剤を使ったらこんな気分になるんじゃないか、そんなピエール〇の疑似体験のようなものを味わせてくれる作風だった。
そんな中、デメリットもある。それはあまりの中毒に作者『ありあす』様の他作品にまで飲み込まれてしまい、時間が失われることである。あなたはどんどん蝕まれていき、やがて本当の犯罪者になってしまうかもしれない。くれぐれも注意いただきたい。
ただ、やはりあなたはラッキーだ。この作品に出会えたあなただけが救われる。それがどういう意味か察してもらいたい。
つまるところ、『夢であって欲しかった』は短編として最高の出来上がりである。それに誰もがタイトルに共感できる。恋人に振られ……テストの点数が悪かった……会社で大きなミスを起こした……誰だってタイトル通りの言葉を頭に浮かべたことがあるはずだ。そんな人に読んでもらえれば、より一層この作品を楽しめると思う。
※私のレビューを読んでしまったからには、あなたはこの作品から目を背けることは出来ないだろう。もし万が一『夢であって欲しかった』を完読しない人がいれば、その人はこの物語の主人公と同じ結末を迎えてしまう。