第14話 帰ってきたウルトラマン
さて遠回りをしてウルトラシリーズ三作目である帰ってきたウルトラマン。
彼の名称に関しては今なお熱い議論が交わされることでしょう。ジャック、二世、新、帰マン……一応、円谷の公式ではジャックが名称ということになっていますね。
さて、人気シリーズであるウルトラマンの続編ということで制作されたこの作品。当初は初代ウルトラマンの直接の続編ということでハヤタが登場する予定だったり、やってくるウルトラマンも初代その人のつもりだったようですが、そうではなくなりました。
新たに郷秀樹という青年を主人公に据え、MATという防衛チームを結成する。また初代ウルトラマンのハヤタ、セブンのダンがある種完璧な主人公像であったことから郷秀樹はそこからの差別化が図られ、最近の若者っぽい描写もたびたび見られたのです。
調子に乗ったり、仲間と喧嘩したり、防衛隊チーム以外の夢があったり。
ここからウルトラマンには日常風景というものが描写されるようになりました。
ある意味、平成ウルトラマンシリーズにおける多彩な主人公像はここから始まっているといっても過言ではないでしょう。
そんな帰ってきたウルトラマンですが、やはり苦労は多かったみたいですね。初代の焼き回しにならないようにと様々な試みがなされ、主人公である郷秀樹のキャラクター性もそうですが、展開としてもウルトラマンの敗北からのリベンジ、特訓といった部分もあります。
これは当時スポコンが人気だったという背景もあるようですが、ちょっと評価はよくなかったようですね。
視聴者層との乖離があったそうで。ですが、これらの要素は帰ってきたウルトラマンの泥臭さを演出し、その要素が好きというファンの方もいます。
また近年では当たり前となるウルトラマンのパワーアップイベントや歴代との共演もこの三作品目でなされるわけですね。
特にウルトラブレスレットと呼ばれる武器は万能武器で槍やら盾になったり、さらには氷漬けにされバラバラ(比喩表現なし)されたウルトラマンジャックを復活させるなどの活躍を見せます。
武器を持ったウルトラマンというとセブンもそうなのですが、印象としてはやはりジャックでしょう。
そして初代ウルトラマンとセブンの競演という熱い展開……なのですが、このストーリーは同時に重いストーリーでもあり、番組序盤に郷秀樹の日常の象徴であるも民間人キャラクターが二名死亡するんです。
これはメタな理由としては演じていた俳優さんたちのスケジュール調整なども重なってしまったとか。
大切な人たちを殺され復讐心に駆られる郷秀樹。しかし、そんな冷静ではない心では敵は倒せない。敗北したウルトラマン、彼を助けるべく現れる初代ウルトラマンとセブン。映画さながらの濃厚なストーリーはとんでもない視聴率をたたき出したそうです。
また帰ってきたウルトラマンにもメッセージ性の高い回があります。
やはり多くあげられるのは「怪獣使いと少年」というエピソードでしょうか。帰ってきたウルトラマンの傑作回といわれたら必ず上げられるストーリーなんですけど、実は僕個人としては「なんだかなぁ」って印象もあるんです。
いえ、実際、ストーリー構成は素晴らしいですし、あそこまで赤裸々に人間の悪意を描いたエピソードはなかなかないといえます。
集団心理、偏見、誤解、無知からくる恐怖。それらが重なり合うとき、知的生命体はどこまでも残酷になれるのである。
そんなおぞましい一面を見てウルトラマンはついに戦いを放棄する。
出現する怪獣。人間たちは叫ぶ。早く怪獣を倒せと。
まさしく身勝手。都合のよい時だけ被害者ぶるというのは心理的なものであっても醜いものです。
ですが、それって駄目なことですけど、仕方ない部分でもあるんです。じゃあやっていいのかよって言うと違いますが、そういう側面を理解したうえで、それでも人間は成長しなきゃならないんだと思い知らされるのではないでしょうか。
このエピソードはかなり突っ込んだ内容ですが、なにもこれをそのまま当てはめて人生の糧にするべきではないと思います。
他人を知ること、他人を許すこと、他者との相互理解、未知への探求。これらを少しでも考えることができれば、僕たち人間ってもうちょっと賢くなれると思うんですよね。
しかし、「なんだかなぁ」という部分に関しては、結局僕たちって声に出さないとわからないわけですよ。
このエピソードに登場するメイツ星人は地球侵略のつもりなんて一切ない善良な宇宙人でした。ですが地球の環境になじめず、体調が悪化。地中に隠した宇宙船を掘り起こせないという状態なんです。
そこで地球人の子供と出会い、交流を深めていくという流れ。
この部分はぜひ本編をみてほしいのであえて語りませんが、ここメタな突っ込みをすれば、MATに協力を要請してみてはどうだったのかという部分ですね。
まぁ、それで解決するとは思いませんけどね。
ウルトラマンの世界はいうなれば多くの侵略者に狙われてきた歴史があります。地球人にとって宇宙人とは悪なのです。多くのずる賢い侵略者たちがあの手、この手で地球を狙っていました。
ならば、メイツ星人も実は……? そう思ってしまうのも仕方ないことでしょう。
このエピソードはそういった誤解と偏見から生まれる悲劇をこれでもかと描いているからこそ評価が高いわけです。
とはいえ苦情もたくさん届いたらしいですけどね。
ウルトラマンはシリーズを通してこうした差別問題という部分にメスを入れることが多々あります。もちろん、それは当時の時代に背景にもよりますし、近年では直接的ではなく間接的にもしくは多少におわせる程度で演出していますけど。
しかし、なんであれ帰ってきたウルトラマンは見事に栄光の初代ウルトラマンとの差別化を成功させ、人気作品の一つとして君臨することができました。
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