第9話 ウルトラマン原理主義者の僕
「こんなのウルトラマンじゃない」
この感情、多かれ少なかれ持ってる人は多いでしょう。言い換えれば「こんなの仮面ライダーじゃない」、「こんなのガンダムじゃない」です。
それに類似して、さらには肥大化したものがどうやら僕の中にあったんですね。
違和感に気が付いたのは恐らくエックスの放送当時だと思います。
エックスは好きです。全部見ました。主人公とエックスの掛け合いや、特にネクサスとの共闘なんかは本当心躍りました。
でも、どうにも受け入れられないものがあったんです。当時はそれに気が付かなかった。気が付かないふりをしていた。
なんかしゃべりすぎじゃね、ウルトラマン。しかもアーマーってなんだよ。
はい、色々と突っ込みたい人もいるでしょうが、聞いてください。
この考え、おかしいですよね。ウルトラマンは昔から結構べらべらしゃべるし、鎧に関しては超闘士シリーズやアンドロメロスなどの外伝でやってきてます。
でもなんででしょうね。気が付くと僕はそう考えていたんです。といってもそれで騒ぐことはなかったですね。
ぬぐい切れない違和感を抱えたまま、次へ、次へ、とシリーズを進めていく。
そして漫画のULTRAMAN。これを見て等身大とか違うじゃん。パワードスーツって微妙だなぁ。
はい、ここでも突っ込まないでください。そんな要素、ウルトラマンは昔からやってきてる。そういいたい人も多いでしょう。僕もそう思います。
なんならウルトラ忍法帖ですらやっていたことです。
でも棚に上げて、何かが違う! これじゃない! という感情は大きくなっていくんですよ。
そんなときに出会ったのがウルトラマンオーブダークブラックノワールシュバルツです。
いや、ルーブ本編はまともに見てないんですが、彼は一時期、話題になりましたからね。その強烈な個性で。
そして彼のセリフの一つ一つが痛いぐらいに、突き刺さるんですよ。
ウルトラマンがべらべらしゃべるなとか、神秘性がないとか、なんだその猫耳とか。
なんだこいつ、なんでこうも僕の抱えている疑問をずばずば言うんだと。この時当たりから、僕の中でくすぶっていた違和感の正体がわかったんですね。
あぁ僕は原理主義者で、新しいものを認めない、認めちゃいけない領域に突っ込んでいるんだと。
それは過去の伝統とかをないがしろにして、ただ自分にとって気にいらないものを否定するかのようなものでした。
自分の中で神聖視しすぎたウルトラマン像ってのをはっきりと認識したんです。
まるでウルトラマンオーブにあこがれた彼のように。
といって彼のように開き直るような勇気もなく、面倒なものを抱えたまま少し間を置きました。
まぁつまり、ウルトラマンから離れたんですよ。
といっても過去作を見たりはしてたんですが。
しかし不思議な話で、これが仮面ライダーやガンダムとかだとどうかというと、案外そうでもなかったんですよ。毎年、色んなライダーやガンダムが出てくる中、別に僕はそれらを見てライダーじゃないとかガンダムでやる必要ないなんて思わなかったんです。
思い入れが少ないからだろうか。
いや、それは違う。どちらもウルトラマンと同じくして幼い頃から親しんできたものだ。でも、気にはならなかった。
なぜだ? 無理やり、結論を出すならばそれほどまでに僕の中でのウルトラマンは巨大で、ありすぎたのだと。
自分はウルトラマンという影から一歩も離れていないどころか、ずっとそれにすがっていたのではないかと思うのです。
幼い頃、僕に世界を見せてくれたウルトラマンに対して、僕はずっと居座り続け、勝手に期待を抱きすぎていたんでしょう。
これが解消されるのは、ちょっと時間がかかるでしょうね。
なんせ、今なおその真っ最中ですから。
なので、今やっているシリーズも見てないんです。
それはウルトラファンの風上にもおけないなと言われそうですが、僕は一ファンであるからこそ、一度はウルトラマンから離れないといけないのではないだろうかと。
いや適切な距離を持つべきなのだと思うんです。
それがうまいことできていたのが、仮面ライダーでありガンダムだったのでしょう。
でも、ウルトラマンはそうじゃなかったんです。
初めて知ったヒーローというのはあまりにも大きすぎたんです。
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