第83話 ホムンクルス2、サヤカとモエ


「マスター、探しました」


「アインか、何かあるのか?」


「皆さんにお茶菓子などを用意しましたので、ご一緒に小食堂の方に参りましょう。他の皆さんは、シャワーを浴びていますので、じきに小食堂にいらっしゃいます」


「そうか。ところで、おまえの後ろにいるのが、ホムンクルス2号か?」


「はい、名前は工藤萌くどうもえ13歳としました。モエ、マスターに挨拶しなさい」


「マスター、はじめてお目にかかります、ホムンクルス2号の工藤萌です。よろしくお願いします」


 モエの方はちゃんとした服を着ていた。買い物に行っていたのだから当たり前か。


「茶菓子は人数分あるんだろ? ホムンクルスの二人もつれてみんなでお菓子を食べようじゃないか」


「それじゃあ、モエ一緒に行きましょう。ドライ、サヤカは?」


「サヤカはいま服を着てますー。ちょうど、出てきましたー。サヤカー、急いでー」


「はい」


 キリッとした声とともに、すごいスピードでサヤカがこっちにやって来た。人の出せるスピードではない。やはりホムンクルスということか。こんどはちゃんとした服装なので安心してみていられる。


「お待たせしました」


「それじゃあ、行こうか」


 小柄な二人のホムンクルスを伴って小食堂に向かう。部屋に入ると、着替え終わった中川たちが既に席についていた。


 俺たちが部屋に入っていくと、自然、見慣れない少女二人に視線が集まる。


「またまた、みんなに新しい仲間を紹介することになった」


「工藤萌です。よろしくお願いします」


「月島紗耶香です。わたしも、よろしくお願いしまーす」


 ホムンクルスの二人が前に出てあいさつした。これに対して、中川、村田、吉田が各々あいさつして、みんな席についた。すでに用意されたいたお茶とお菓子が銘々に配られて簡単なお茶会が始まった。


「さっきの自己紹介では、この二人の名前が分かっただけで、はっきり言って誰も良くわからなかったと思う。実はこの二人は見た目はかわいい女の子なんだが、人間じゃない。ホムンクルスといって、ドライが作り上げた人造生命体だ。しかも、今日の午前中に生まれたばかりだ」


 最近、ここにいる3人は驚きなれているせいか、俺の言葉くらいでは驚かなかったようだ。目の前の女の子がどのようなものであれ、見た目が良ければすぐに受け入れることが可能なのだと思う。もしこれが、おぞましい謎の生命体だったらかなりインパクトがあったと思うが、そうではないのでみんな落ち着いたものだ。


「霧谷くん、ホムンクルスも作れるんだ。しかも、こんなかわいい女の子が二人も」


 村田が、村田らしい本音のコメントを漏らした。それを吉田が聞いて少しムッとした顔をしのだが、それでもホムンクルスの二人に遠慮したようで何も言わなかった。


「能力的には、アイン達マキナドールには全く及ばないそうだが、並の人間では太刀打ちできないくらいの能力があるらしいぞ。ドライ、そうなんだろ?」


「はい。戦闘用に作ったわけではありませんのでー、重火器などが直撃すると死んじゃいますー。そのかわり、知能と身体能力は非常に高く作っていますー。それと、使った素材の関係で魔法も今後使えるようになる可能性もありますー」


「うん? 魔法が使えるようになる可能性とは?」


「魔法を教えることができる者がここのメンバーにはいないのでー、自分で試行錯誤して使えるようになるしかないのですー」


「何でまた、女の子のホムンクルスを作ったの?」


「実は、俺の妹が中学でイジメにあってるんだ。今は周りの女子から無視されている程度で済んでいるらしいが、これからどうなるかわからないだろ。それで、この二人を妹の中学に送り込んで妹を守ってやろうと思ってな」


 しばらくイジメを受けていた村田が、


「霧谷くんの妹さんへのイジメが軽いうちに何とかできるなら、早い方がいいよ」


「それはそうね。だけど霧谷くん、あなたは顔に似合わずシスコンなのね」


「シスコン? 顔がどう関係するのかわからないが、できることはやってやった方がいいだろ」


「春菜ちゃん、妹思い・・は妹想い・・のシスコンとは違うから安心しなさい。

 霧谷くん、そのうち妹さんをわたし達にも紹介しなさいよ。それで妹さんは結構美人さんなの?」


「そうだな。そのうちみんなにも紹介しよう。まだ、中1だからな。二月ふたつき前まで小学生だったんだ、美人も何もないだろう」


「少し言わせてもらうと、小学校の高学年なら、美人ならはっきり美人と分かると思うよ」


 村田はこういうことになると持論を展開するのはいいのだが、隣に吉田が座っていることを失念しているようだ。それ見ろ、吉田が何か言いたそうな顔をして、目を細めて村田を見いてるぞ。


 武士の情け、ここは少し話題を変えてやるか。


「そういうことで、二人とも俺の妹のこと頼むな」


「はい。了解しました」「はい」


 二人そろって立ち上がり、しっかりと返事をしてくれた。兵隊さんのようですがすがしいな。


「それで、アイン、中学への転入の手続きの方はどうなってる?」


「来週の月曜から転入するよう手続きをしました。二人を従妹という設定で同じ住所から学校に通うことになります」


「住所が同じじゃないと面倒だが、二人の見た目が違うから、双子にはできないし、良いんじゃないか。ドライ、二人の見た目はそろえて双子風にはできなかったんだろ?」


「いえ、わたしの趣味で二人の見た目を決めましたー。それを見て、戸籍などの調整をしていますー」


「まあいい」





[あとがき]

『真・巻き込まれ召喚~』のサヤカとモエは、本作では主人公側のホムンクルスの中学生として登場させました。

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