第82話 ホムンクルス1


 中間試験も無事終了し、採点済みの答案もすべて返って来た。俺は、8教科の中、7教科満点で、1教科が95点だった。5点の減点は採点ミスと思うが、どうでも良いのでそのままにしておいた。



 食堂での会話もおのずと今回の中間試験の成績についての話になる。


「霧谷くん、試験結果どうだった? 僕は特訓のおかげで、満点はなかったけど、全教科90点以上とれたよ」


「村田、結構頑張ったじゃないか。俺の方は、1教科満点じゃなかったが、後は満点だった」


「この学校じゃあ順位は出ないみたいだけど、その成績だと、学年トップなんじゃないかい」


「そうかもな。だからといってどうなるわけでもあるまい?」


「T大受験するのには内申書はあんまり関係ないって聞くわ。試験の成績が全てと思っていいそうよ。でも、霧谷くんすごいわね。私は2教科満点取りそこなったわ。別に霧谷くんと勝負してたわけではないけれど、私の負けだわ」


「霧谷くんといい、中川さんといい、ほんとにすごいな。僕なんかが一緒にいていいのかな?」


「何言ってんだ。教師たちの話を聞く限りだいたいの科目の平均点は70点台だったじゃないか。それを考えると、村田もかなり上位だと思うぞ」


「そうなのかなあ。二人と一緒にいると全然そんな気はしないからなあ。ハハハ」


「しかし、中川はすごいな。俺の場合は、いろいろ特別だから簡単に満点取れるけれど。そんなのに関係なく自力でその成績のほうがすごいんじゃないか?」


「あら、褒めてくれてありがとう」


「さすがは、K大付属中でトップだっただけはあるな」


 今回の試験は俺たちにとっては、満足のいく結果だったようだ。



 午後の授業が終わり、いつものように連れだって地元駅まで帰り、事務所の奥にやって来た。試験の終わった昨日からトレーニングを再開している。


 中川と村田は各々の着替え室でトレーニングウエアに着替え軽く準備運動を開始している。じきに吉田も合流したので、そこからは村田のトレーニングが本格スタートした。


 朝方、事務所に立ち寄った時のドライの話しでは、美登里用のホムンクルスが昼にでも誕生するといっていたので、もう誕生しているはずだ。美登里に付けた蜘蛛からの情報を最近はちょくちょく見ているのだが、美登里に対するイジメは無視程度でとどまっている。イジメがエスカレートしないうちにホムンクルスが間に合ってくれて助かった。


 俺は、トレーニング中の3人を残して、管理棟内のドライのいる研究室へ向かうことにした。1度行ったことのある俺は転移で跳んでいくので問題ないが、物理的にはこの研究室はどこともつながっていないそうだ。通常の出入りは専用の転移陣がドライ専用の個室の中に設置されていて、それを使って管理棟と行き来すると言っていた。


「ドライ、俺だ」


「マスター、ホムンクルス、元気に生まれましたー」


「どこだ?」


「今呼びますからー。1号、こっちにおいでー」


 少しそこで待っていると、後ろの方から人の気配とぺちゃぺちゃと音がする。振り向くと、ドライよりも小柄な女の子が、マッパで裸足はだしのままこっちに歩いてきている。


「ドライ、いくら何でも服ぐらい着せてやれよ」


「ひょひょひょ。こっちの方がマスター受けするかなーと思いましたー」


「マスターですか? はじめてお目にかかります。私はホムンクルス1号です。これからも末永くよろしくお願いします」


「ああ、こちらこそ、よろしくな。まだ服は持ってないのか?」


「いえ、ちゃんと下着からすべて頂いています。マスターに最初にお会いするときは、何も着けてはいけないと、ミストレスドライに指示されました」


 ドライのヤツは知らぬ間に自分のことをミストレスドライと呼ばせているらしい。


「分かったから、1号、すぐに服を着てこい」


「了解しました」


 くるりと背を向けてホムンクルス1号が元来た方に戻って行った。小さなお尻がぷりぷりと動いて可愛らしい。しばらく1号の後ろ姿を見ていると


「ひょひょひょ。ああいったのがマスターのお好みでしたかー。マスターも守備範囲が結構広いんですねー。ひょひょひょ」


「何をバカなことを言ってる。それで今の1号の名前は、あのままじゃないんだろ?」


「はい、用意した戸籍では月島紗耶香つきしまさやか13歳ということにしました」


「可愛らしい名前だな」


「はい、今はやっているアニメに出てくる女の子の名前から取りましたー」


「何ていうアニメだ?」


「えーと『真・巻き込まれ召喚。 収納士って最強じゃね!?』ですー。その中の主人公ではないんですが少し軽い感じの女の子ですー」


「おまえでもアニメを見るんだ」


「24時間複数チャンネルを見てますから、当然アニメも見てますー。その中でのお勧めですー、4月スタートのアニメだったのでもう3話も見逃しましたー。でもいろいろNETで探したら見つかりましたー」


「そこまでするほど面白いのか? その『巻き込まれ』は」


「面白いですー」


「そいつは良かったな。ところでアインはどこだ?」


「アインは2号を連れて、マスターたちに出すお菓子類を買いに外に行ってますー」


「2号というと、もう一人ホムンクルスを作ったのか?」


「二人いた方が助さん、格さん的にいいと思いましたのでそうしましたー」


「助さん、格さん的の意味は分からんが、黄門さまも見てるのか?」


「はい、午前中に毎日再放送が流れてますー。これも面白いですー。そういえば、最近はNET小説も読んでますー」


「ドライはこっちの世界にほんとに馴染なじんでるな」


「はいー。NET小説はピンキリ? みたいですが、わたしはヤマグチユウシとかいう作者の書いてる『宇宙船をもらった男、もらったのは星だった!?』が面白いですー。『小説家の野郎』っていうサイトにあるんですが、作者がいい加減で最近更新が滞っていますー」


「作者にも都合があるからじゃないか? 例えばよそのサイトに投稿してそっちばかり更新してるとかあるだろ」


「そうかもしれませんが、困ったちゃんですー」






[あとがき]

宣伝回でした。

SF『宇宙船をもらった男、もらったのは星だった!?』そちらでは私が主人公として出演していますのでよろしくお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054897022641

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