第7話 里帰り2


 地球でアイテムボックスも、その他の魔法も問題なく使えることから、あちらの世界(アース)と自由に往来できると確信していた。


 現に、こうやって何の問題もなく、拠点に戻ってこれた。消費したマナは微々たるものだ。これなら好きな時に行き来ができる。


 今いる部屋には、地球での俺の部屋に設置した定点用小型転移陣と対になった転移陣を設置している。この部屋は拠点の地下にあり、俺が日本に戻るために作り上げた帰還用転移魔法陣を設置した部屋にある時空相対標定器に繋がっている。



 大き目の転移反応が拠点の地下で発生したので、今頃かなり大ごとになってるだろう。何も言ってなかったからな。


 すぐに、皆がいると思われる中央指揮室に転移する。


「やあ、みんな、驚かせてすまん。ちょっと試しに戻って来た」 


 何だかみんな真剣な顔をして、周辺監視用モニターを見ていたようだ。


「マスター!」


 俺の副官のアインがほうけたような顔で俺を指さす。人を指差してはいけません。


「拠点内の未確認転移反応はやはりマスターだったんですね。安心しました。転移阻害障壁が正常稼働中にもかかわらず、転移反応を拠点内で検知したので1級拠点内警戒態勢に移行するところでした。マスターはマスターの世界とこちら側と往復できるようになったんですね」


「言ってなかったけど、いったん帰りさえすれば簡単に行き来することができるんだよ。まあ、ついになった転移陣をこちらとあちらに設置しただけだけどな。

 それはそうとアイン、みんな大変そうにしてるけど、これは俺のせいなのか? 外の様子をモニターで見てるようだが」


「アガタリア軍6個歩兵師団が第1警戒線を突破しました。2時間後に第1防衛線に接触の見込みです。現在侵入中のアガタリア軍は広域殲滅魔法を使用して、第1防衛線付近を攻撃しています。防御部隊に被害は出ていません。敵の魔法規模から言ってアガタリア軍1個魔導師団が投入されているものと思われます。現在、第1防衛線に展開中の防衛部隊から捜索のため4個中隊を抽出し、敵司令部の位置特定を急がせています。また、第1機甲部隊が第1防衛線に転移準備中です。敵は森林部分に展開しているため、航空攻撃は行っていません。」


「何で今頃?」


「マスターのマナ反応の消失を察知したようです。マスターのマナ反応は、隠蔽いんぺいされていない場合かなりの距離から観測可能ですから」


「俺もあまり隠蔽してなかったからな。仕方がない。だが、人の不在に付け込むとは。 

 今回は、撃退だけでなく、懲罰行動も行う。爆撃隊を出すぞ。目標はアガタリア首都王城の完全破壊だ。更地にしてやれ」 


 しかしこいつら、いくら俺がいないとしても、うちに攻めてくるか? 舐めてんのか? それともバカなのか?


「了解しました」


「こちら中央指揮室アインだ。第1、第2制空飛空艇隊発進せよ。アガタリア首都制空権確保及び防御設備の破壊を命じる。

 爆撃飛空艇1号艇から4号艇には硬式爆弾搭載。爆撃飛空艇5号艇から8号艇には焼夷爆弾搭載。搭載後ただちに発進。爆撃目標はアガタリア首都王城だ。爆撃飛空艇1号艦から順に爆撃せよ。ガワを壊して後は焼き尽くせ。


 あと、勇者パーティーを自称する民間人が、第1防衛線に別途接近しています。いかが致しますか?」


「ああ、あの連中ね、あいつらは、フュアでも出して適当にあしらっておいてくれ。ケガさせないようにな。あいつらバカだけど一応俺の同郷だからな。間違ってもツバイは出すなよ。そういえばツバイがいないようだが?」



「ツバイは現在、アガタリアのさらに北方にあるドラニア地方に出ています」


「何してるんだ?」


「本人は、武者修行と言ってました」


「いや、ツバイがいまさら何を修行すると?」


「さあ。ですが、何にせよ、ツバイのことは放っておいても大丈夫でしょう。

 フュア出撃です。指示した場所に勇者パーティーを自称する民間人が数名います。マスターの指示を聞いていたと思いますが適当にあしらってください」


「フュア了解。出撃します」


「フュア、しっかりな。 

 しかし留守にしていたたった2、3日で部隊をそろえて攻撃してくるか? どうなってるんだ?」


「マスター。マスターが元の世界に帰還されてすでに3か月経過しています。そんなに簡単に行き来できるならもっと早く帰って来てくださいと言おうと思ってましたが、それでしたら仕方ありません。現在は、聖歴645年8月15日です。」


「時間の進み方がだいぶ違うみたいだな。まあ、転移陣を繋げたから、これからは時間の進みが同じになるはずだ。面倒なことになる前で良かった」


「マスターはこれからどうされますか?」


「そうだな。しばらく戦いの様子をみてから、向こうに帰る」


「了解しました」




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