第6話 里帰り1


「ただいま」 


 家に帰ると、玄関の鍵が開いており、母さんと美登里は中学の入学式から帰っていて着替えを済ませていた。 


せいちゃん、すぐにお昼にするからちょっと待っててね。今日はミートソースね」


……


 スパゲティーのミートソースを3人で食べながら、入学式のことや学校のことを話す。もちろん、あの二人組とのトラブルについては何も話さない。無難な会話というやつだ。



 食事を終え、2階に上がり俺の部屋に戻る。俺の部屋は6畳ほどで、床はフローリング。机と、ベット、それに本棚でほとんどいっぱいだ。部屋の入り口横のクローゼットの中に普段着などが入っている。隣は妹の部屋。


 足の踏み場もないというほどではないが、結構狭い。


 向こうの世界の連中は、自分たちの世界のことをアースと呼んでいた。それはそうだろう。彼らにとって、基本的に自分たちの大地(アース)が世界の全てなのだ。そして彼らは、自分たちが利用するため拉致らちする人間のいる世界のことを、異界いかいと呼んでいた。


 さて、向こうの世界、アースと往復するため、この部屋に転移陣を設置するとしよう。こちらの世界に、アースにある俺の拠点に設置した転移陣と対になった転移陣を設置することで、両世界が同期し、低魔力コストで行き来が可能となるハズだ。多分。


 アイテムボックスから取り出した厚さ5ミリほどで縦横50センチほどのミスリル製の板を部屋の隅のフローリングの上に置く。板の上には転移陣が刻印されていて、板の隅の方の空いた場所に、防音用の魔法陣と偽装用の魔法陣も刻印されている。


 3つの魔法陣に魔力を流し込むと、ミスリル板はうっすらと一瞬青く光り、すぐに目視出来なくなった。板の角を踏むと段差もあるし、素足で踏むとひんやりしているので、違和感がある。母さんとか美登里が踏むと何かあるのかと気付くかもしれないが、まあいいだろう。後で、ちゃぶ台かなんか母さんに言ってもらってこよう。


 次に、クローゼットを開け、その中に置いてある衣装箱を取り出す。


 衣装箱の中の衣服を、そのままアイテムボックスに取り込み、代わりにアイテムバッグを取り出す。このアイテムバッグはあまり高級なものではないが、内部容量が約5000リットルまで拡張されており、100分の1の重量軽減効果も付いている。以前空間魔法の練習用に俺が作成したものだ。


 これなら目いっぱい重たいものをアイテムバッグに突っ込んでも床が抜ける心配はないだろう。


 さきほどアイテムボックスに入れた衣服をアイテムバッグに移しかえ、クローゼットの中に吊るしてあった厚手の服もアイテムバッグに突っ込んでから衣装箱に入れ、蓋をして、クローゼットの中に仕舞う。だいぶクローゼットの中が片付いた。


 次に、アイテムボックスから、マナ収集器を4本取り出し、クローゼットの奥に間隔を空けて立てかけておく。これも銀色のミスリル製だ。直径7センチ、長さ1メートルほどの円筒状で表面に縦にまっすぐ何本も刻みが入っている。この刻みの入った部分が、空気中のマナを吸収する吸収層で、筒の内部は魔石を精製して薄い円板状にしたものを積層させたマナ貯蔵層となっている。


 これ1本で、俺の最大マナの2倍ほどのマナ貯蔵量を誇る。


 円筒の上の面に、マナの蓄積量と、100%まで蓄積するまでの予想時間が表示されている。今の表示は『0%:180.5H』。1週間ちょっとで空のマナ収集器が、満杯になるようだ。この数字からすると地球上のマナ濃度は、異世界とほぼ同じらしい。アイテムボックスの中には、まだ何本もマナを満タンにしたマナ収集器が入っているのだが、この地球でもマナ収集器でマナを収集できることを確認できたことは大きい。


 とりあえず、作業は、こんなところか。



 確認もかねて、早速さっそくあっち(アース)に戻ってみよう。




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