第3話 帰還3
翌朝、2階にある自分の部屋から食堂兼居間に
「父さん、おはよう」
「おはよう。誠一郎、眼鏡かけるんだってな。仕方がないけど、眼鏡をかけてると若いうちはすぐに度が進むから気を付けろよ。だからと言ってかけないわけにもいかないけどな」
「高校に入ったら、もう少し気を付けるよ」
「そうだな。ま、頑張れよ」
「
「うん。顔洗ってくる」
「その前に
「わかった」
「おーい、美登里ー。朝だぞー。起きろー」
そう言えば、美登里のやつ寝起きが悪かった。美登里の部屋のドアを軽くたたきながら何度か呼んでいると、
『今起きる。もう少ししたら起きる。きっと起きる。……』
部屋の中から、寝ぼけたような声が返ってきた。その声は、だんだんと小さくなっていったのだが、とりあえず義務は果たした。
歯を磨いて顔を洗い、朝食をとっていると、先に食べ終えていた父さんが、
「それじゃ、行ってくる」
そう言って上着を羽織り勤めている市役所に出勤していった。
「「行ってらっしゃい。」」
俺と母さんが父さんを見送っていると、やっと美登里が2階から下りてきた。
イチゴのパジャマの上着の裾が半分はみ出して、寝ぐせの付いた髪がぴょこんとアホ毛になっている。わが妹ながら……。
まあ、つい何日か前まで小学生だったんだからそんなもんか。
「美登里ちゃん、ご飯の前に顔を洗ってらっしゃい。パジャマも着かえてくるのよ」
「はーい」
ぼうっとした顔のまんま、とぼとぼと洗面所の方に歩いていった。
やっと、この日常を取り戻せた。自然と頬が
「ご
朝食を終え、食器を洗い場に下げていると、美登里が普段着に着替えて食卓にやってきて自分の椅子に座った。
「明日から、美登里も中学生なんだから、ちゃんと起きるんだぞ」
「わかった。でも、わたしが寝坊したらお兄ちゃんが起こしてくれるんだよねっ!」
美登里はそう言いながら、箸をとって、食事を始めた。
俺は、美登里ににっこり笑ってそう言われると、何も言えなくなってしまう大アマなお兄ちゃんだ。
俺は居間のソファーに移動してテレビを点けてニュースをぼんやり眺めて眼鏡屋が開く10時まで時間をつぶし、10時過ぎに、商店街の入口にある眼鏡屋に行って眼鏡を作った。
視力0.5程度を想定し、店の人の質問に受け答えしてレンズを作ったのだが、ほんとのところ適当だ。
どうせすぐに自分で改造するつもりなので、フレームは、一番安い黒くて肉太のプラスチック製のものにした。レンズも当然一番安いレンズだ。3時間後の受け渡しだったので、一旦家に帰り昼食後受け取りにいくことにした。
3時間後、眼鏡屋にもう一度出かけて受け取った眼鏡をそのまま掛けて帰宅した。これで目つきの悪さも目立たないだろう。
家に帰って、母さんと美登里に眼鏡姿を見せたら、母さんはなんともなかったが、美登里は笑っていた。
「お兄ちゃん、頭良さそうー。あっはっは」
少しもそう思ってないのが丸わかりだ。
さて、買って来た眼鏡を改造するとしよう。どう加工するかは既に考えている。
自分の部屋に戻り、外した眼鏡を左手で持ち、右手で錬成を発動しゆっくりとレンズの度を無くしていく。凹レンズなので、凹んだ部分を元に戻す感じでゆっくり膨らませていく。凹んだ部分を平らに均し終えたが、これだとただの板ガラスなので、目つきは隠せない。
アイテムボックスからミスリルの薄板に刻まれた
フレームもプラスチックでは心もとないので、表面だけフィルム状に残し、内部をアイテムボックスから取り出したミスリルと置き換えていく。ミスリルに十分な魔力を充てんし、レンズの
本格的な刻印魔法による隠蔽の方が効率的だが、この程度のことに刻印魔法はやや面倒なのでこうした。
出来上がった眼鏡をかけて、鏡の前の自分を見ながら、右手の人差し指でちょっと眼鏡を上にあげてみる。
キリッ!
できる男の出来上がりだ。
まてまて、これでは将来のために教育してあげた昨日の商店街の迷惑お兄さんと一緒だ。自分でやっていて恥ずかしい。
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