その14 ミリュート神は喋りたい
出された昆布茶は思いのほか悪くなかった。
ただ、一緒にクッキーを出さなくても良かったと思うんだ……。
「満足できたかしら?」
「はい!とても良かったです!」
ルキはとても嬉しそうな表情で言った。
もうおそらく緊張しすぎて感覚が壊れてきているのだろう、テンションがハイになってきている。
「そう、それならよかったですわ!私も久しぶりの来客で気分がいいわ」
とミリュート神もルキを見ながら笑顔になる。
「やっぱり本当はもう少しお話しできる人がいると嬉しいのですけどね」
笑顔の中に曇りができる。
ルキは気が付いていないようだがこの言葉は俺たちに言っているようではない。
「ですがミリュート様、近頃昔に比べて事件が多いのは分かっていますでしょう?」
どうやら光正たちの後ろの方でずっとスタンバイをしている人がいたようだ。
さっき昆布茶を持ってきてくれたのもおそらくその人だろう。
「このリースィの街は事件はほとんどないじゃないのよ!」
どうやら口論を始めそうだったので何とかして話題をそらす。
「ミリュート神は神様ですから街の事件がどうこうは関係ないのではないでしょうか?」
「それが、困ったことにあるのですのよ。最近は神々の力のバランスが崩れてきてしまってね……」
どうやら事件が多くなるのと神々のパワーバランスが崩れているのには因果関係があるらしい。
「基本的に私たち神と呼ばれるものには信仰してくれる人間や種族がいて、その数が多ければ多いほどその神は力を増していくわ。でも、近頃になってそれは少し違うことが分かったのよ」
先ほどまでの笑顔の雰囲気とは一転変わってミリュート神は真面目に話を始める。
「何が違うのかというと、どれだけ信仰されているかによって神の力は変わるわ」
要するに、信仰している人数が一人で変わらないとしてもその信者が普通に信仰しているのと狂信者ならば後者の方が信仰されている、ということになる。
「それで、今まで力を持っていなかったはずの氷の神・フェリオンが街を転々としながら狂信者を増やしていっていてその狂信者たちが街を荒らしまわっているのよ」
氷の神のため、大陸の北側には信仰している種族もいたのだが、南に行けば行くほど信仰も少なくなる。
それで大陸の南端にあるリースィにはほとんど信者がいないため被害がないようなのだ。
「街の人が大勢死ねば、それだけミリュート様のお力も少なくなってしまうのです。ただでさえ、三大信仰は被害が多いのに……」
当然ながら人数が多い信仰は数が多い分ダメージも喰らいやすい。
悠長にお茶会などをやっている暇はないのである。
「これ以上狂信者が増えるのはこちらにとっても不都合ですね」
コウセイは立ち上がった。
転生先の最高神が超マイナー神様でした! 夏樹 @natuki_72
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