第四章 最後の戦い
(幕間)ロンドン1654
「スザンナ! 彼とは別れるべきだ」
「金の切れ目が縁の切れ目だというのウィリアム?」
「そうは言ってないだろ!」
「アメリカでは家族して散々彼にたかったじゃない?」
「確かにストートン家が持ちこたえたのはジョージ兄さんのお陰だ。しかし、今の彼はどうだ? 事業は失敗続き、哲学者の水銀を自作する事にも失敗、頼みの綱だったハートリップサークルの連中にも見放され、頼みの綱の錬金術もロンドンに来たらてんで上手くいかなくなった。今じゃただのイカレた詐欺師じゃないか」
「それが聖職者の言う言葉なのウィリアム?」
「聖職者だからこそだよ! 賢者の石を作り出すとか怪しい話で金を集めようとしていただろ? 魔女狩りにあったらどうするつもりだ!」
「魔女狩りだなんて、いつの時代の話をしているのよ」
「お前は田舎を知らないからそんなことが言えるんだ。一歩ロンドンを出てみろ! 賢者の石で永遠の命を得るなど話したら、たちまち村人に八つ裂きにされるぞ!」
「表だって錬金術の事を言いふらすのは注意するわ。だから……」
「無理だ。僕には……」
「何でよ?! こっちに渡るときに貰った金貨はどうしたのよ?」
「ダメだ!」
「どうしてよ?」
「二回目だぞ!!」
ウィリアム・ストートンはテーブルに両手を叩きつけた。スザンナ・スターキーは兄を睨みつけた。この時、夫であるジョージ・スターキーは借金を踏み倒した罪で2回目の監獄生活を送っていた。この後も夫婦の生活は困窮を極める。そして、失意の中1665年……。
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