5話 本当のさよなら?

「はぁ、、、つっかれた〜」

「お疲れ様です!アイトさん」

「ありがとう、、、ってか朝見当たらなかったけど、何してたんだ?」

「、、、女の子のデリケート部分に立ち入るんですか?」

「いや、、、その、、、」

「私ってそんなに信用ないですか?」

「信用はしている、、、」

「、、、わかってますよ。信じてるけど怖いんですよね。さらさんに振られたから、多分、女性と付き合うことに恐怖を抱いてるんですよね。大丈夫です。私からは絶対に振りませんよ。」

私はそれを聞いて、言うかどうか迷った。だが、言うことにした。

「お前は、私から振られる心配は無いのか?」

「、、、そう来ましたか。私は、アイトさんが幸せになってくれるのなら、それでもいいですよ。っとそろそろかな。」

「もうすぐ私の家だ。もうここでいいよ。ありがとな。」

「アイトさんの為なら何処へだろうと行きますよ!さようなら!」

「あぁ、じゃあな」

そして私は帰路を辿るのだった。

「ふぅ、、、今日は疲れたな」

そんな疲労を感じながら家に入ろうとすると

「アイト」

そう聞き覚えのある声が聞こえた。

大好きだった声。

でも今は聞きたくなかった声。

「さ、ら、、、」

「こんばんはと言った方がいいかしら?そんなに時間が経ってないけど、久しぶりね」

「あ、あぁ久しぶり、、、何故ここにいるんだ?」

「ちょっと聞きたいことがあってね。」

「聞きたいこと?」

「えぇ、、、貴方が今、珠紀さんと付き合っていると噂を聞いたのだけれど。」

「っ、、、」

一瞬息が詰まったが

「あぁ、、、そうだよ。理恵は傷ついてる私に優しく接してくれた!私を肯定してくれたんだ!それの何が悪いんだよ!」

すると、さらは冷静な声で

「勘違いしているようだけど、別に私は悪いなんて言ってないわ。」

そう言って、さらは帰ろうとしていた。

「帰るのか?」

「えぇ。もうここに居ても何にもならないし。今の貴方には珠紀さんがいるでしょ?」

「、、、それだけなのか?お前は私が他の人と付き合って何も思わないのか?嫌いなまま別れたわけじゃない。好きなまま別れたのに、、、お前は、、、なんで好きな人が他の人と付き合っているのに、どうしてそんなに冷静にいられるんだ、、、?」

そう言うとさらは

「それは貴方が言えることなのかしら?」

怒気の孕んだ声だった。

「さ、ら、、、」

私はか細い声でその名を呼んだ。

「私は沢山の人から告白されてきたわ。でも、私はそんな人達と付き合ってなんかいない。私は貴方の事が好きだから。でも対して貴方はどうなの?好きなまま別れたのに、貴方は新しい彼女を作たりして。貴方の方がよっぽど私の事好きじゃなかったように思えるけど?」

「それは、、、」

反論できなかった。

さらが言っていることは、あまりにも正論だったから。

「貴方の好きは、こんなにも薄っぺらいものだったのね!私がこんなにも冷静なのはね?悲しみや後悔よりも、貴方に対する呆れが大きいからよ!見損なったわ。アイト、私から別れたとはいえこんなにもすぐ新しい彼女を作るなんて、、、本当に見損なった。今の貴方は大っ嫌いよ!あの砂浜で別れた時よりも!、、、それじゃあね。」

そんな台詞を吐いて彼女は去っていった。私はただ呆然と

「一体どうすれば良かったんだ、、、」

と空を仰ぐことしかできなかった。





「、、、馬鹿、馬鹿!、、、本当に馬鹿!」

私があの家に行ったのは、付き合っているかどうか調べるため。

珠紀さんのデマだと思った私は、少なくともアイトの事を信じていた。


でも違った。

二人は既に付き合っていたのだ。

私はこんなにもずっと一人だというのに。でも当てつけに彼氏を作ろうとは思わなかった。

さっきは大っ嫌いと言ったが、心の中では大好きだった。


だから叫ぶのだ。


「、、、馬鹿!」

と悔し涙が出てくる。

「ーーこんなことになるんだったら、、、!」

別れなければよかった。


その言葉を呑み込む。

ここでそんなことを言ったって、もう意味なんてない。

故にそんな弱音は吐かない。

でも目尻からは涙が零れ出ていた。

私は満月の下で走る。涙を流しながら。

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出会いと別れとストラップ 永沙 智也 @ks20040906

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