4話 大好きだよ、、、
「はぁ、、、またか」
私は靴箱を見て溜息をついた。
手紙が沢山入っていたのだ。
所謂ラブレターというやつである。
周りから過度に視線を感じる。
多分、この手紙の主だろう。
手紙を読むと、屋上で待ってます、と書いてあった。
そもそも、名前も知らない、興味のない人から言われたところに行かなくてはならないのだろうか。結局は振ってしまうのに。
「めんどくさい、、、」
そう言って、教室へ向かおうとした時に
「さらさん」
そう、女の子の声が聞こえた
「、、、何かしら」
「ちょっと話したい事があるんで屋上へ行きませんか?」
「ホームルームに間に合うのなら、、、」
男子から手紙を貰うことはよくあったが、女の子からは初めてだった。
屋上に着くと、
「えっと、、、あなたは、、、」
「私の名前は珠紀 理恵です」
「珠紀さん、何の用?それと、何故私の名前を?」
「私もさらさんの立場だったら私のことなんて知らないでしょう。要件というのは、貴女についてです」
「私?」
「貴女は今楽しいでしょ?周りの人から告白三昧、アイトさんを振っても愛してくれる代わりがいるのだから」
「今が楽しい訳ない!アイトの代わりなんかいないっ!」
「あの人を超える人なんかいる訳ない!
「なら、どうして振ったんですかね?まぁ、、、自分勝手なのはさらさん然り、私然り、、、アイトさん然りですけどね」
「なんでそこでアイトが、、、」
と言うとその言葉を遮って珠紀さんは続けた
「人間は面白いですよね。傷ついて悲しんでいる時にそっと手を差し伸べられると、その人の事をコロッと好きになっちゃうものなのですよ」
「それって一体、、、」
「それくらい、自分の無い頭で考えたらどうですか?」
私は珠紀さんに怒りを覚えつつも考えた。
そして、1つの可能性だけ浮かんだ。
これだけ2人、大切な人しか知らない重要なことを知っている、ということは、、、
「まさか、、、」
「やっと気づきましたか。ご察しの通り私は、アイトさんとお付き合いすることになりました」
そんな重要な事を彼女はケロッと言った。
「う、嘘よ!そんなの信じない!」
「別に信じなくてもいいですよ。知りたいなら直接アイトさんに聞いてみたらいいじゃないですか。もしかして、アイトさんが自分の事をずっと好きでいてくれる、なんて思ったんですか?」
「そんなの、自分の想像、、、いわばおとぎ話でしかありませんよ。でもアイトさんの中にはまださらさんがいて、私が2番目。そんなことは分かっています。」
「だから、邪魔しに来ても構いませんよ?ですが私は、それを乗り越えて1番になってみせます。言いたいことはそれだけなので、さようなら」
そう言って彼女は立ち去った。
私はその場で泣き崩れる事しかできなかった。
でも、やっぱり思うことは
「アイト、大好きだよ」
その言葉は誰に聞こえることも無く消えゆくのだった。
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