変わる
怒られながらも母と深く語り合って、心の内を解き放った私は少し寝不足になりながらも遅刻することなく学校に来た。
『お母さんこんな風に夜中まで娘とお話するの夢だったの!』
そう語る母は女学生みたいで、まるで母の方が娘のようだった。
「岬さん。」
格好つけてクールぶってはいたものの、本来コミュニケーションを得意としない私は声が震えそうになるのを拳を握って我慢する。
「あ、えっと、竹光さん、ど、どうしたの?」
「日曜日、私も行っていいか?」
断られたらどうしよう。
『かぐや、まずはお友達を作りなさいな』
『う、うん、私もほしいなって思ってた…』
『このままじゃずっと一人で学生時代終わっちゃうわよ』
『わ、分かってるけど…』
『あーあ、ずっとひとりぼっちの女じゃ太輔くん嫌いになっちゃうかもなあ』
『そ、それはやだ!!』
『じゃあ早速明日お友達になりたい子に話しかけるのよ』
『分かったよ!頑張ってみる…』
『よしよし』
母に背中を押されて今日、勇気を振り絞って話しかけてみた。
「い、いいよ!全然いい!大歓迎!あの!山田くんのお父さんがやってるお店でね!た、食べ放題でね!山田くんが個室みたいなの借りるって言ってて!」
岬ちなは興奮したように鼻をふんふん鳴らしながら私の手を握る。
「そんなに早口にならなくても、」
「あ、えっと、ごめんなさい!あの、あのね、私、竹光さんと仲良くなりたくてね、竹光さん、かぐや姫みたいで綺麗で、かっこよくて、憧れてて、えっと、えっと、」
「大丈夫、ゆっくりでいい」
緊張していたはずが私より緊張して話すものだから収まって宥める側になってしまった。
「え、えっと、お、お友達になってくれる?」
顔を真っ赤にしながら言うものだから告白されている気分だ。
「ぜひ、なってほしいな。」
「お、なになに、告白?いいんちょー勇気ある〜」
「ち、違くて!お、お友達になってもらったの!」
「ううん、私がなってもらったんだよ。ありがとう、岬さん。」
「あ、えっと、ち、ちなでいいよ!私も、かぐやって呼んでもいい?」
「もちろん。」
「え、いいないいな、うちもかぐやって呼びたい!なんなら姫って呼びたいー!」
岬さん、ちなとのやりとりは教室で行われたものだからクラスのほとんどがみていて、そして終わった途端に囲まれて話すことになった。
まだクールぶった話し方はやめられていないけど、でも、進歩だ。
友達ができたんだから。
私は、 、私のなりたい大人になって、そして、月の使者が来る前に、太輔くんと同じ道を歩くんだ。
今は違う道でも、
同じ世界なんだから。
月の使者が来る前に 佐々木実桜 @mioh_0123
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