当日……

 雲一つない青空。それが余計に不安にさせる。

 今日は、日曜日にふさわしい快晴だ。しかし、風が強く、常に日差しが照り付ける。そんな日は嫌いだ。雨よりはマシだが。

 4月というのに、暑い。

 こんなにカンカン照りなら、もうちょっとチョコの量を減らせばよかったな……。まあ、俺にチョコ作りを依頼してきたやつらに対して、そこまでいいイメージはない。なので、持ってくる段階で服がドロドロになって、本題にすら入れない呪い。そう考えると少し清々する。


 そもそも、なぜ俺が不安になっているのか。それは、まあ、その……だな……。

 どうせ、後になれば分かるから。




「バレンちゃん」

「ビット?」

「……顔、忘れたの?」

「そんなことない」

「ふーん」私の顔をまじまじと見つめてくる。

「……寝不足?」

「そうだけど」

「そんなに苦労しても、どーせ、マズいでしょ?」

「……そんなこと、ない」

「……」

「とは、言い切れない」

「ほら!やっぱり料理はセンスなんだよ!」

「そうだけど。もうちょっと、遠慮してよ」

「……やだ」

「は?」

「はいはいキレないキレない。そんなんじゃお嫁さんになれないよー」

「……うるさい」

「はいはい」

「こんなときまでからかって、楽しい?」

「うん!」

「……ねえ、ビット」

「どうしたの?バレンちゃん」

「今日はとってもいい日です」

「はい」

「しかも、日曜日です」

「はいはい」

「しかも、四日前は満月でした」

「はいはい」

「今日はみんなで楽しもうよ」

「はいはい」

「だから、私をからかうの、やめない?」

「やめない」

「……はぁ」

「どうしたの?そんなため息」

「……もうお前にはうんざりだよ」

「だーかーらー!『お前』じゃなくて……」

「はいはい。ビットって呼べばいいんでしょ」

「……そう、だけど」

「だけど?」

「……なんでもない」

「……かわいっ」

「……バレンちゃん、変なこと言わないで」

「んー?なにが変なの?」

「……言いたく、ない」

 ビットとの会話がもたついてきたころ、ようやく、集合の鐘の音が鳴った。




「それでは、みなさーん。元気ですかー?」果物屋のお姉さんの、普段よりも甲高い

 声が広場に響いた。

「「はーい!」」ガキの無駄に景気のいい声が脳内にまで響いた。さっきの黄色い声もうるさいが、こっちの方が余計に騒がしい。

「それでは、ルール説明でーす」また、騒がしい。俺は寝不足もあって、すぐに目を閉じた。



「それでは、みなさーん。スタートラインに立ってくださーい!」どうやら、睡眠中に解説は終わったらしい。俺は立ち上がった。

「……寝てたでしょ?」ビットだ。

「もちろん」

「あ、でも、大丈夫だよ」

「何が?ルールならさすがに知ってる」

「そーじゃなくて、バレンも寝てたよ」

「……だから?」

「……ふふっ」



「それでは!エッグハント!はーじまりー!」

 鐘と同時に号砲までなった。今年のイースターは普段よりも面倒なものになりそうだ。そんな気がした。

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バレンとワイト 深谷田 壮 @NOT_FUKAYADA

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