ワイトの頼み

「ワイトー。いまどこにいるの?」

「黙っててもわかるだろ」

「んーわかんない!」

「……わがまま」

「だって、ベンキョー教えてほしいんだもん」

「今ちょうど店閉めたところだし、お手伝いのタンさんに聞いたら?」

「……そうだね」

「そうだよ」

「……ごめん」

「いいよ」

「……そしたら、そっち行っていい?」

「……好きにして」

ガチャ。トトトト。

「でさでさ、ワイト。今年は何でこんなに忙しいの?」

「いろんな人から頼まれてるんだよ。自分で作るの、面倒だろうから、まとめて引き受けた」

「さすがパティシエの卵」

「どうしたビット。妹のくせに上から目線で」

「いやさー」

「……もったいぶんな」

「だって、言ったらつまんないし、だって、だって……」

「何も言わないなら、さっさとどいてくれ。こっちは忙しいんだ。あと十個も作らなきゃいけないんだ」

「ふーん」

「……意味深なことはあるけど言うな。色々バレる」

「バレたらどーなるの?」

「まずビットが周囲に言いふらすだろ?」

「それで?」

「俺が学校でさらされる」

「サラス?」

「バレてみんなにからかわれること、だ。いやだろ?学校でみんなにバカにされるの」

「……やだ」

「わかったか?わかったらこのことは秘密にするんだ」

「ヘイヘイ」

「ヘイは一回だ」

「ヘーイ」

「はい、そしたら俺は湯煎するのであっちいけ」

「ヘイ。あ、ちょっと待って」

「どうした」

「そのチョコ、それだけデザインが違うよ?」

「くっ、手抜きがバレたか」

「いや、そーじゃなくて。なんでその一個だけゴーカなの?」

「……さすがに自分のは」

「『自分の』って、これでしょ?自分のサインが下に書いてあるの」

「……」

「ふーん」

「『ふーん』ってなんだふーんて」

「そのチョコ、バレン用でしょ?だよンンン」

「はいはい。子どもは黙って寝なさい寝なさい」

「へほひははばほびひゃん」でも今まだ5時じゃん。

「……おこちゃまは黙って勉強してなさい」

「……けち」

「ま、どーせ明日になればわかるんだから」

「……」

「ビットは湯煎すらできないんだし、勉強するしかないし。はい、部屋に戻って」

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