バレンとワイト

深谷田 壮

バレンは大慌て

「おじゃまー。バレンいる?」

「んあ?何しに来た!」

「いつもどーり。遊びにきたけど」

「あーわかったわかった。こっちは今ちょっと手離せねえの。明日まで待てって」

「あした?」

「……察せよ」

「んー無理!さっせない!」

 ガチャ、と音がした。すぐに足元まで寄ってくる。

「な!てめえ、こっちは忙しいんだよ!」

「『てめえ』じゃなくて、『ビット』って、呼んで、ほしいなー?ほしいなー?」

「ビットの生意気娘、その辺にしろ。そろそろキレる」

「えーその程度で怒っちゃうの?おヨメに行けなくなるよー」

「……それは困る」

「でしょー。だったらちょっとぐらい手伝わせてー」

「……お前にできるか?」

「できるでしょ!って、チョコ?」

「え?見てわかんないの?」

「わかるけど、」

「だろうな。でさ、あんた女子力ってやつ、少しはあるだろ?」

「たっぷーり、あるけど?」

「挑発してんのか?蒸発されてえのか?」

「まあまあ」

「ママだって?あのねえ、いくら7歳だからって言っていいの悪いのあるの知らねえの?」

「ホントに、ホントに落ち着いて……」

「ふん、まあ私はお姉さんですし、落ち着きますよーだ」一呼吸置いて、

「で?何かこのチョコにダメ出しはあるの、パティシエの姪っ子さん」

「ある!」

「失礼な」そんなバレンを無視して、ビットが言った。

「こんな色で大丈夫なの?」

「…え?」

「いやー……その……」

「なーにー?はっきり言って!」

「それって、ホントにチョコ?」

「そうだけど、食べてみればわかる…」

「……ヤダ」

「は?なに失礼な口聞いてんの?張り倒すよ!」

「そっちが『ちゃんと言って』って言ったじゃん!」

「あ、そっか」

「それと、4日後だよっ」ガチャ、ドタドタタタ……

「ビットめ、ちゃっかり大事なこと教えといて逃げたな…」

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