口はわざわいのもと
ある人に娘があった。
娘が幼いころ、飼犬に「この娘がおまえの妻だぞ」と冗談で言っていたところ、娘が長じて縁談を持ち込む者が家を訪れるようになると、その犬に追い払われてしまい、だれも縁談を持ち込まなくなってしまった。
犬の娘への思いは強く、常に娘の側を離れなかった。
占い師にたずねたところ、「娘への思いが強いので、犬を殺してもむだだろう。約束どおりにするしかない」とのことだったので、両親は泣く泣く娘を犬の嫁にした。
そんな両親に比べて、犬の嫁にされてしまったのに、娘は悲しいそぶりを見せなかった。
犬と娘は山で、親の建てた家に住み、犬が狩りを行い、その獲物を娘が売りに行くことで生計を立てた。
しばらくして、ある山伏が山にて娘を見かけ事情を尋ねた。
夫が犬であることを知ると、その山伏は娘を自分の妻にしたいと思い、待ち伏せして犬を殺したのち、素知らぬ顔で娘に近づき、夫に収まった。
それから長い年月が過ぎ、山伏と娘の間には七人も子ができたのだが、山伏がもうよいだろうと犬殺しを口にしたところ、娘は犬を忘れておらず、山伏は殺されてしまった。
参照:「江戸怪談集上」の宿直草『七人の子の中にも女に心ゆるすまじき事』
原文に訳しづらいところが数か所あった。内容はおもしろい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます