あばら屋

 夫から逃げ出した女が夜道を歩いていると、前の方から男たちの声がしたので、無人のあばら家へ逃げ込んだ。

 すると、くだんの男たちが近づいてくる音がしたので、女はさらに天井裏へ隠れた。

 直後、男たちがあばら家へ入ってきて、あかりをつけ、賭け事をはじめた。


 さてどうしようかと、女が天井に開いていた大きな穴から男たちをながめていたところ、しばらくして男のひとりと目があった。

 薄暗く正体のわからぬ中、天井から髪を振り乱した女がこちらを見ている。

 男が「あれはなんだ」と天井を指さすと、仲間たちも天井を見上げた。

 しばしの沈黙の後、たまりかねた一人が逃げ出すと、残りの者も我先にと外へ飛び出していった。

 その後、女は床に散らばっている金を拾い集め、親元へ去って行った。



参照:高田衛編・校注「江戸怪談集上」の宿直草『博奕打ち女房におそれし事』

笑いを含んだ怪談。話の筋に関係のない描写は省略。海外にも似た話がありそう。

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