ある侍の話。

 某日、二の腕がかゆいので見てみると、大きなしらみがいた。

 「干からびてしまえ」と侍は虱を紙に包み、文箱の中へ投げ入れた。

 

 それから数年後、文箱を整理していた侍が包み紙に気づき、その中身を確かめてみたところ、何と虱はまだ生きていた。

 物珍しさから手のひらに載せてみたが、虱がみついてきたので、侍はそれを庭へ捨てた。 

 その後、虱に食われたところから体が腐りはじめ、侍は死んでしまった。



参照:高田衛編・校注「江戸怪談集上」の宿直草『虱の憤り、人を殺せし事』

短くておもしろい話のように思う。実際にあった話が元かもしれない。

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