三馬鹿
人里離れた社にばけものが住みついたという
そのために夜はだれも近づかなくなったところ、若者三人が話の種にと社へ出かけた。
三人のなまえは仮に甲太郎、乙次郎、丙三郎としておく。
夜の拝殿は真っ暗闇であったが、三人は気に留めることもなく、車座にすわって変事を待った。
するとふいに天井から大きな物音がした。
甲太郎が落ち着いた声で「今の音を聞いたかい」と尋ねると、「さっきさ、
ふたたび三人が黙っていると、天井から女の声で「下におられる方々、上へあがっていただき、私を助けてくださいませんか」と聞こえてきた。
ひょいと立ち上がった丙三郎が「どこから上がれるのかなあ」と暗やみの中で尋ねたところ、「隅にはしごがあります」と女が応じた。
丙三郎が手探りで天井裏へ上り、暗闇に向かって「おまえさんはだれだい」と聞いたので、女が長々と事情を話し始めた。
夫のある身で他の者と
それからこの社に連れて来られ、間男の首を抱かされたまま縛られてしまったのです。
そのうえ、今日の昼に夫が来ましたので「殺してください」と願ったところ、太ももを刀で刺されてしまいました。
ばけものに食われても仕方のない命ですが、今一度だけ老母に会いたいのです。
どうかお情けをいただいて、縄を解いてはいただけませんでしょうか。
女の話を聞いた丙三郎が、階下のふたりに「どうしようか」と尋ねると、「俺たちが今日ここにやってきたのは、その女を助けろという神の導きなのだろう。助けてやれよ」とのことだった。
母親のもとへ連れて行くために歩いていると、女が急に泣き出した。
「うれしさのあまりに、私のために殺されてしまった男の首を天井裏へ忘れてきてしまいました。あのままではかわいそうです」
すると甲太郎が「それもそうだ。なに、たいしたことではない。君たちは先に行ってろ。俺が取ってくる」といい、ひとり走り去った。
参照:高田衛編・校注「江戸怪談集上」の宿直草『三人しなじな勇ある事』
こういう話が好き。配役はカズレーザーさんと太田光さんに、あとはだれだろう。
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