芥川

 ひそかに将来の約束を交わした男女がいたが、それを知らない女の親が縁談をまとめてしまった。

 二人は駆け落ちをするしかないと、その日は近くのお堂に身を隠した。

 夜が明けたら旅立つ算段であった。


 翌朝、お堂の中で男が目を覚ますと、となりで寝ていた女がいない。

 まわりを見渡すと女の服が散らばっている。

 男は外に出て女を探したが見つからなかった。

 嘆いている男に老人が事情を尋ねて来た。

 男が泣きながら事情を説明すると「あれのことか」と老人が上を指さす。

 その方向を男は見上げた。

 大木の枝に身を二つに裂かれた女の死体がぶら下がっていた。

 男が振り向くと老人は消えていた。



参照:高田衛編「江戸怪談集上」の宿直草『浅草の堂にて人を引き裂きし事』

これは怖い(原文は)。伊勢いせ物語ものがたり芥川あくたがわという話を下敷きにしているがそれは無視。

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