第九十五話 お化け屋敷


 彼女との初デートで遊園地に行った高校生。



 度胸のあるところを見せたくて、遊園地内のお化け屋敷に彼女を誘う。

 案の定お化け屋敷の中は薄暗く、かつそれ程怖くない造り。高校生のちょっぴり邪な作戦は大成功だった。


 そんなお化け屋敷の中でのこと……。


 高校生はお化け屋敷の凝った仕掛けを見付け感心していた……。


 それは白無垢の壁からスルリと抜け出す女性という仕掛け。天冠と経帷子という古風な姿で壁から抜け出て来るのだ。


 高校生はその仕組みが気になり壁に触れてみたが、何も変わった様子がない。叩いても押しても只の壁でしかなかったのである。


 では立体映像だったのかと更に感心していたその時……例の幽霊姿の女性が壁からスルリと現れ高校生と目があった。


 見つめ合うこと数秒。女性の幽霊は笑みを浮かべ“スゥ~ッ”と姿を消した……。



 高校生はここで初めてソレが本物であることに気付き、悲鳴を上げて逃げ出した。その際、彼女から手を離さなかったのは誉めるべきだろう。



 その体験談をネットに書き込むと、同じお化け屋敷で同様の体験者が居たことに驚くことに。


 書き込みの中にはこんな考察があった……。


「幽霊は実は人と変わらない。寂しくて接触したいのだ。しかし、普通に出ても周波数が合わず見えない。だから感情が高まる場所……そして人間が見間違いと『自分に言い訳出来る場所』を選んでいる」


 つまり、お化け屋敷は最適の場所ということになる。



 そんなお化け屋敷………あなたが見たそれは作り物か、はたまた本物の幽霊か……。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る