第九十四話 海岸


 西日本のある地域の海岸には、奇妙な遺体が流れ着く。



 隠れた飛び下り自殺の名所などと言われているその場所は、海流の影響で遺体が入り江に流れ着くらしい。


 だが、その遺体の状態は本当に崖からの転落死か疑わしいものだった……。



 打ち上げられる入り江の遺体は一つ共通点があった。

 自殺者の遺体は必ず複数同時に、しかも互いを掴むようにして打ち上げられるのである。


 海水に漬かっている時間の影響で検死の正確性が低下するが、二人同時期の死亡とは考えづらいというのが警察の見解だ。


 中には骨に絡み付かれた遺体もある程……その異常性は特筆すべきだろう。


 数日前に見付かった遺体は、足に三つの千切れた腕が掴まっていた。

 それらは全て右腕……少なくとも、あと三人の遺体が見付かっていないことになる。



 地元には海神信仰と寄り神信仰が混合した特殊な信仰があり、漂着した遺体を拝むと海神が大漁にしてくれる……という話もある。


 もし、海神が居るならば人の生け贄を望んでいるのかもしれない……。


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