第八十九話 廃病院


 ある夏の夜、大学の友人達が集まり肝試しに向かうことになった。


 場所は廃病院。全国的な知名度は低いが、“出る”と有名な心霊スポットだった。



 一同は車で病院の駐車場まで乗り付け、そこからほんの僅かな距離を歩く。

 そうして辿り着いた病院の入り口。いざ中へ……と思ったところで、上方から呼び掛ける声が……。


 “おう!おう!”と呼び掛ける声に懐中電灯の灯りを向ければ、病院の窓には青い検査服を着た老人が立っていた。しかし……その姿は透けていて、明らかに生きた者では無い。


 そして一同は、そんな老人から発された言葉に凍り付くことになる……。


「おう!今からそっちに行くぞぉ~?」


 そう言って病院の中へと姿を消した老人……。


 大学生達が呆けていると、病院の中をスリッパで走る音が近付いてくる。

 パニックになった大学生達は、全力で走って車に戻り急加速で逃げ出した。


 信じられないものを見た……しかし、とにかく一安心。と思いきや、車の後方には走る老人の姿が……。


 その老人は暫く“行くぞぉ!今行くぞぉ!”と叫びながら追走していたが、更に加速した車から徐々に離れて行った……。



 それ以来、大学生達は二度と肝試しをしなかったそうだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る