第九十話 飛ぶ首


 夜中に妙に喉が渇き水を飲もうとしたが、冷蔵庫は空っぽ。


 何となく目も覚めてしまったので、近くのコンビニまで飲み物を買いに行くことにした。


 深夜とはいえ灯りが所々にある為、空も仄かに暗い夜道──そんな中を歩いていると、夜空を何かが横切った。


 かなり影が大きいことと夜飛び回っていることから、『こんな街中にもフクロウが居るのか?』と思ったがどうも様子がおかしい。


 鳥は何やら妙な鳴き声を発しているのだ……。


 しかし、そんなものに気を取られていても仕方がない。喉の渇きに急かされるよう先を急ぐと、鳥が再び目の前を横切った……。


 そうして自販機の上に止まった鳥の姿は……人の生首だった……。


 灯りに照らされた姿は生首の耳の辺りから鳥の翼が、喉の辺りから鳥の足が出ていたのである。


 しばらく硬直していると、『生首鳥』が二羽、三羽と自販機の上に並び停まる。


 生首は周囲を窺っていたが、やがて“ヒヒ!ヒヒヒヒ!”と笑い声を上げて暗闇へと飛び去っていった。


 その不気味さに出歩くのが怖くなった男は、コンビニで空が白むまで時間を潰し寝不足となったという……。


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