第六十九話 影女



 病院に検査入院した際のこと。


 夜中にふと目が覚めてトイレに向かう。その後部屋に戻ると、カーテンがやけに明るい。

 その日は満月だったらしいが、病院という場所柄それを満喫する気にはならなかった。


 再びベッドに横たわり目を閉じるが、今度は中々寝付けない。


 仕方無いと、ふと目を開け本でも読もうかと考えたその時……月に照されたカーテンに長い髪の女性の影が……。


 その影は何やら手招きをしているが、そんなことを気にしている場合ではない。


 病室は三階。外にはベランダも通路も、乗ることができる屋根もないのだ。


 気味の悪さから病室には居られず、看護師に頼み込み待ち合い室で過ごすことになった……。



 翌日……話を聞いた同室の老人から『それは【影女】で何か悪さをする訳ではない』と言われたが、見た側からすれば生きた心地がしないことは確かだろう……。

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